秘密保護法案で注目「知る権利」はなぜ重要?
安倍政権が「特定秘密保護法案」を国会に提出、衆議院で審議が行われています。 この特定秘密保護法案とは、「防衛」「外交」「スパイ活動防止」「テロ活動防止」の4分野のうち、国が「特に隠す必要性」があると考えた情報を「特定秘密」に指定し、それを漏らしたり不正に入手したりした人を厳罰にする、というものです。気になるのは、この法案のいう「特定秘密」の基準や範囲がわかりにくいこと。どんな情報を秘密にするのかがあいまいでは、国の都合でなんでも「特定秘密」に指定できるうえ、報道・取材の自由も制限されてしまう。つまり、国民の「知る権利」が侵害されるわけです。こうした批判を受けて、政府も法案に「知る権利」に配慮する規定を盛りこみました。 [図表]特定秘密保護法案ってどんな法案? では「知る権利」とは具体的にどんな考え方でしょうか。
国民が判断を下すための大前提
民主主義における政治は、国民の意思にもとづいて行われ、選挙を通じて政治に参加する仕組みになっています。そのときに大前提になるのが、投票の判断材料となる情報を自由に入手できること。簡単にいえば、これが「知る権利」です。政府や企業が自分にとって都合の悪い情報を隠すと、国民は正しい判断ができなかったり、欠陥商品を買わされたりする恐れが出てきます。だから、「知る権利」は認められるべきで、民主主義社会では国民が真実を知るために不可欠の権利とされているのです。 もっとも、ヨーロッパなどには憲法や基本法で「知る権利」を保障している国が少なくない一方で、日本は憲法をはじめ、ほかの法規でも「知る権利」を明記していません。1983年の最高裁判決で判例上は認められたのですが、99年に情報公開法が制定されたときも、当時の自民党政権は「権利としてまだ成熟していない」と「知る権利」の条文化を拒んでいます。国を統治しやすいという考えから、政治権力を持つ側には情報公開に対して後ろ向きな傾向があるのです。いまの「知る権利」をめぐる問題も、こうしたことの延長線上にあるという見方もあります。 かりに「知る権利」がなかったらどんな社会になるのでしょうか。