2025年大学入試から「歴史総合」の有無で、受験校選びに大きな影響 早慶の併願が困難に
出題傾向で大学が2グループに
さらに、要注意なのは入試での取り扱いです。私立大の25年入試科目を見てみると、「歴史総合」を出題範囲に含むか含まないかで2つのグループに分かれます。 例えば、早稲田大学や中央大学法学部は出題範囲に含みませんが、慶應義塾大学(商学部を除く)や明治大学は含むと発表しています。それをまとめたのが下の表です。関東圏の私立大は一部を除いて「歴史総合」を出題し、関西圏の私立大は出題しない傾向があります。関東の日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)は出題し、関西の産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)は出題しません。関西学院大学は当初は出題する方向でしたが、出題しない方向に変更しており、東西できれいに分かれています。関西の大学は「歴史総合を出題して受験生や大学の負担を増やしても、双方にメリットがない」と判断したのかもしれません。
併願プランが変わる
以上のことからいえるのは、これまでの併願プランが通用しなくなるということです。例えば、これまで早稲田大学、明治大学、法政大学の入試は「国語と社会が難しい」という共通点があるため、併願しやすい組み合わせといわれていました。ところが、「歴史総合」については、早稲田大学が出題せず、明治大学、法政大学は出題します。方向性が分かれてしまったのです。 「歴史総合」の代表的な教科書は、256ページというボリュームです。併願校のために、分厚い教科書で勉強しようと受験生が思うのか、疑問です。早稲田大学を受験するなら、「歴史総合」を出題しない中央大学法学部や関西の大学を併願し、慶應義塾大学や上智大学を受験するなら、「歴史総合」を出題する明治大学や法政大学と併願するのが、時間的に有利ではないでしょうか。 「早・明・法」の併願率は7~8割ともいわれていましたから、となると、大学受験の一大事と言っても過言ではありません。
「歴史総合」の有無で、早慶の併願が困難に
「歴史総合」を出題する大学を見ると、「おしゃれな大学」の代表格ともいえる慶應義塾大学、上智大学、立教大学が入っています。「歴史総合」を出題するという観点で併願を考えると、ここに「骨太な大学」のイメージがある明治大学や法政大学が加わることになります。そうなると、おしゃれなキャンパスをバンカラの学生が闊歩する。そんなふうに、大学のキャラクターまで変わっていく可能性もゼロではないかもしれません。 前出の都立高校教員は、こうも語っていました。 「早稲田大学は地方出身の学生が減り、中央大学法学部も都心にキャンパスを移転したことで、学生層が随分と変化しました。入試が変わると、学生の顔がさらに変わっていくでしょう」 早稲田大学と慶應義塾大学の両方を受けるということは、現実的な対応ではなくなってしまいます。 このほかに25年入試では、東洋大学が学力試験のみ(志望理由書の提出や面接試験が課されない)の学校推薦型選抜を導入することが大きなニュースになっています。大東文化大学や帝京大学といった大規模大学が追随する動きを見せており、受験生の動向に影響を与えることが予想されます。新課程入試と個別入試の新たなウェーブ。25年入試を境に日本の受験地図が一変していくのは間違いなさそうです。 なお、出願する際には、入試科目や出題範囲を念入りに確認してください。特にウェブサイトは前年度の入試情報が残っている場合がありますので、注意が必要です。
朝日新聞Thinkキャンパス