「魅了され憧れた…」90年代名作ドラマで「ヒロイン・中山美穂」が最高に輝いた瞬間
■スープを味わう中山さんの所作も美しかった『おいしい関係』
『おいしい関係』は、槇村さとるさんの人気漫画を原作とした1996年放送のドラマである。 本作で中山さんは、社長令嬢から見習いシェフへと転身する主人公の百恵を演じた。物語は、父を亡くした百恵が唐沢寿明さん演じる天才シェフ・織田圭二と出会い、彼のレストランで働き始めるところから展開していく。織田は気難しく孤独な性格で、百恵とはたびたび衝突するが、料理を通じてだんだんと心を通わせていくストーリーだ。 中山さんの凛とした美しさは、社長令嬢から一歩踏み出した女性像を際立たせていたように思う。その一方でパチンコで気分転換をする姿や、自分に正直に生きる等身大のキャラクターとしての魅力も存分に発揮されていた。また、織田とのテンポの良い掛け合いや、時折コメディタッチになるシーンがちょくちょく挟まれていたため、軽快さが感じられるのも良かった。 そして、中山さんの魅力がもっとも引き立っていたのが、料理を味わうシーンだろう。横顔の美しさや丁寧な所作は、ただ食事をしているだけでも華やかな雰囲気を醸しだし、視聴者を魅了した。 本作は配役も豪華だった。フードプロデューサー役に飯島直子さん、織田を慕う弟子のシェフ役には草彅剛さんがキャスティングされている。また、次々に登場する一癖ある客たちも物語を盛り上げた。 百恵がそのような曲者の客にどのように向き合い織田と協力して解決に導くか、そんなドラマティックな展開も見どころの一つであった。
■木村拓哉さんとW主演のミステリー『眠れる森』
1998年に放送された『眠れる森』は、中山さんの代表作の一つだ。当時、アイドルとして絶大な人気を誇っていた元SMAPの“キムタク”こと木村拓哉さんとのW主演とあって、大きく注目されたドラマだ。 当時は美しいヒロイン&木村さんであれば高視聴率が取れるといった風潮があったが、本作は単なる“ラブストーリーもの”ではなく、緻密なミステリー要素を織り込んだ本格ミステリーロマンスとして展開された。 物語は婚約者との結婚を目前に控えている主人公・大庭実那子(中山さん)が、ある日偶然、差出人不明の古い手紙を見つけるところから始まる。その手紙には「15年目の今日、眠れる森であいましょう」と書かれていた。その後、実那子は手紙の送り主に会うため、思い出の森を訪れる。そこで待っていたのが、実那子の過去を知る謎の男・伊藤直季(木村さん)であった。 実那子は幼いころ、家族全員を交通事故で失った過去を持っていた。事故のショックで幼少期の記憶が曖昧だった実那子だが、物語の鍵を握るのは15年前に起きた市議会議員一家殺人事件であり、実那子の失われた記憶が事件と深くかかわっていることが明らかとなる。 そしてフラッシュバックにより彼女が記憶を取り戻すたびに新たな真実が浮かび上がり、物語は緊張感を増していくのだ。 中山さんは過去を追い求めながらも苦悩する女性を繊細に演じ、まるで童話の『眠れる森の美女』のプリンセスのような美しさ、そして儚さと強さを感じさせた。 本作では実那子の婚約者やその失踪した母親、直季の友達や恋人など多くの登場人物が登場する。しかし彼らの多くが二面性を持っており、誰が味方で誰が敵か分からない展開が視聴者を引き込んだ。ミステリアスな木村さんの演技も相まって、二人の微妙な関係性からも目が離せなかった。 従来のフジテレビドラマとは異なるミステリー要素を前面に押し出した本作は、視聴者から高い評価を受け、最終回は30%を超える視聴率を記録した。 今回紹介した作品に共通するのは、苦悩しながらも前向きに進んでいく女性の姿だ。それを中山さんはただ美しく見せるだけでなく、内面的な深みを持たせた演技で魅了した。この姿に多くの視聴者は共感し、憧れを抱いたことだろう。 90年代、数々のドラマで活躍した中山美穂さん。当時、学生だった筆者は、中山さんの比類なき美しさに魅了され、彼女の澄み渡る歌声に聴き惚れた1人だ。それがもう二度と見られないことは、本当に残念でならない。 中山さんの数々の功績は、今後のテレビドラマや映画文化にも大きな影響を与えていくことだろう。
でかいペンギン