Vaundyが”シーンを撃ち抜く”2デイズ『Vaundy one man live "HEADSHOT" at Makuhari Messe』を幕張メッセで敢行【オフィシャルレポート】
ライブ会場となった幕張メッセ9-10ホールに足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのはホール中央に設置された四角形の360度ステージ。まるで格闘技のリングのようなそれをオールスタンディングのフロアが取り囲む。これまでのVaundyのライブとは明らかに違う雰囲気に胸を高鳴らせていると、16時30分すぎ、SEが鳴り響き、ステージが青い光に包まれた。4人のサポートメンバーが演奏しだしたのは「東京フラッシュ」のイントロ。この1年半あまり一切ライブで披露されてこなかったVaundyの始まりの曲。どこからともなく、「相槌が上手くなったんだ」と声が聞こえてくるが、ステージ上にVaundyの姿は見えない。筆者は反対側にいたのでわからなかったが、フロアを貫く通路を通り、歌いながら入場してきたらしい。その辺も格闘技っぽい。とにかくいきなりのレア曲にオーディエンスは熱狂。いつもと一味違うVaundyのワンマンライブ『HEADSHOT』はこうして幕を開けたのだった。 【すべてみる】千葉・幕張メッセ『one man live "HEADSHOT" at Makuhari Messe』フォトギャラリー(全16枚) その後も「灯火」に「花占い」と代表曲を畳み掛けるVaundy。イントロが鳴るたびにフロアからは大歓声が上がり、手拍子が巻き起こる。Vaundyは四方のオーディエンスに顔を向けながらパフォーマンスを繰り広げる。最近はアリーナでのライブが増え、いわゆるサービス映像を使わないVaundyのライブでは席の場所によっては彼の表情がほとんど見えなかったりするのだが、今日は距離がとても近い。サポートメンバーも含めたステージ上の5人の一挙手一投足が手に取るようにわかり、それがライブに生々しいダイナミズムを生み出していく。BOBOの重たいビートから始まりVaundyがスタンドマイクで歌った「そんなbitterな話」では、前回のアリーナツアーでも効いていたTAIKINGのギターが楽曲に色をつけ、さらに場内の温度を高めていく。 3曲を終えて「あっつい……」と声を漏らすVaundy。もちろん空調もフル稼働しているはずだが、それでもホール内にはオーディエンスの熱気が充満している。「いよぉ、元気か?」という声に対してフロアから上がった歓声に「じゃあ踊れるな?」と返し、突入したのは「常熱」。力強いリズムがオーディエンスの体を自然と揺らしていく。ハンドアクションを交えながら歌うVaundyも楽しそうで、歌いながら「あげぽよ~!」と叫んだりしていた。そこから続けて「そのまま踊りな!」と「踊り子」を投下すると、フロアの熱狂はさらに一段上がる。Vaundyの踏むステップもどんどん大きくなっていき、序盤のハイライトといえるような盛り上がりを生み出していくのだった。 と、ここで街の雑踏の音をサンプリングしたインタールードが流れ、ライブの雰囲気はガラッと変わる。これまたライブで聴くのはかなり久しぶり(ワンマンでは2022年の武道館以来だと思う)の「世界の秘密」を経て「napori」のゆったりとしたリズムが心地よく会場を包み込むと、ここで披露されたのが「宮」。アリーナツアー『replica ZERO』でもそうだったように、Vaundyはステージ中央に置かれた椅子にもたれかかるように座って歌っている。呟くように、はたまた語りかけるように歌われる繊細な歌。その中に潜む表情のひとつひとつに、いつも以上にVaundyの人間の部分が浮かび上がるようだ。先ほどのアッパーチューンの連打も、この内省的な部分を覗かせる歌も、どちらもVaundyを構成する重要な要素。『replica』のコンセプトから離れて、この『HEADSHOT』では過去の楽曲も含めてVaundyという表現の総体がプレゼンテーションされている。『HEADSHOT』とはいわゆる<プロフィール写真>のことであり、今回のライブテーマとして掲げられたが、まさにVaundyがVaundyを自己証明するようなセットリストとパフォーマンスだ。ちなみに『HEADSHOT』という言葉自体には<撃ち抜く>という意味もある。突如シーンに現れ、数々の楽曲でリスナーを撃ち抜き続けるVaundyにとてもふさわしいタイトルだ。そういう意味では、続いて披露された「タイムパラドックス」は映画『ドラえもん のび太の地球交響楽』の主題歌としてVaundyの音楽をそれまで以上の人々に届けるきっかけとなった、まさに<鮮やかに撃ち抜いてみせた>楽曲だといえる。オーディエンスを指差したりしながら語りかけるように歌うVaundyの姿がとても印象的だった。