最先端のAI? XR? それより、この没入感は観ておいて損はない。渋谷開催のMUTEK.JPでね
本日11月22日から24日にかけて渋谷という街全体をステージに開催されるデジタルアートの国際イベント「MUTEK.JP」。渋谷ヒカリエでは多くのクリエイターやテック企業の重鎮が最先端のアート事情を語るカンファレンスが、そして同じく渋谷のとWOMBでは電子音楽と映像を組み合わせたショーケースイベントが、それぞれ繰り広げられています。 【全画像をみる】最先端のAI? XR? それより、この没入感は観ておいて損はない。渋谷開催のMUTEK.JPでね このイベントと同期間にオーディオビジュアル・インスタレーションのエキシビション「ETERNAL Art Space Exhibition」が、渋谷ヒカリエホールBにて開催されています。 今年のテーマは、"Humanity and the Modern System - showcasing reality as art as a transformative experience - "(現実を芸術として見せることで、観る者にトランスフォーマティブな体験をもたらす)というもの。 AIやXR、そしてopenFrameworksといった最新技術を使った映像、音楽、ライティングの組み合わせで日常の出来事や要素をアートに変換。鑑賞者に新しい視点や感覚を与えることで、意識や視野に変化をもたらすことを目的としています。ギズモード編集長の尾田が、「映画『シビル・ウォー』の10倍ぐらいの没入感」と絶賛したインスタレーションをさっそく見てきたので、その模様をレポートしましょう。
圧倒的な映像の情報量
参加アーティストは、日本の映像・サウンドシーンを牽引し、オーストリアのアルス・エレクトロニカのデジタル・ミュージック & サウンド・アート部門でゴールデン・ニカ賞(最優秀賞)を受賞した黒川良一と、トランスメディアプロジェクトを通して、デジタルリアリティの肯定から生まれる美学と言語を探求することを目的としたイタリアを代表するアートコレクティブ SPIME.IM + AKASHA。 インスタレーションはいずれも3つの大型スクリーンに映し出される映像と、音響やライティングを駆使したもので、3作品が上映されトータル35分ほどです。 まず黒川良一による「re-assembli」。 これは自然と人間が作り出したものの関係を建築のスケールから追求するプロジェクト。森林のような自然のなかで建物が朽ちていく様子を映し出しており、はっきりとしたストーリーがあるわけではありませんが、サイコホラー映画のような不穏さを醸し出しています。 建築物、遺跡、自然をレーザースキャンで3Dデータ化して、それをプログラミングを駆使しながら変形させている映像は美しくも儚い。 映像と完璧にシンクロするグリッチな音楽も圧倒的なクオリティです。 同じく黒川良一の2作目は「ground」。 これは戦争という明確なテーマがあり、ベルギーの映画プロデューサー、ダニエル・ドゥムスティエが中東で撮影した写真・映像を再構成しています。戦士たちの姿をゆったりとしたシーケンスで静かに表現しており、見る人の感情をうまくコントロールしながら、戦争という現実の恐怖を淡々と伝えていきます。 3作目はSPIME.IM + AKASHAによる「HINT」。 高度資本主義の裏側に潜む荒廃をシニカルに表現しています。ホームレスのテントで溢れる都市の姿や、セレブたちのグロテスクなパーティーなど、生成AIを駆使したかなり批評性の高い映像。映像の情報量が凄まじく、そのこと自体が高度なハイテク批判になっているともいえます。 いずれの作品もリアルとフィクションが交錯するんですが、絵作りの高度さはちょっと想像を超えていました。AIやXRでの映像クリエーションって、もはやこのレベルまで来てるのか…って、認識を新たにさせられるくらいインパクトが大きいです。音響やライティングとのコンビネーションも素晴らしい。 最先端の映像技術に興味ある人は、見ておいた方がいいインスタレーションです。ぜひ時間を作って足を運んでみてください。 ETERNAL Art Space Exhibition presented by MUTEK.JP 会場:渋谷ヒカリエ ホールB 日程:11月22日 (金) 、23日 (土) 11:00 - 20:00 (9回上映) 11月24日 (日) 11:00 - 19:00 (8回上映) 上映時間:35分 チケット:2,500円 (大人)、1,500円(学生) ※MUTEK.JP パスポート購入者無料 Source: ETERNAL Art Space
巽英俊