一層美しく「野性的」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 665psを受け止める有能シャシー
快適な乗り心地 高負荷で実力が表れるシャシー
路面が乾いている限り、強化されたサブフレームとビルシュタイン社製の引き締まったDTXダンパーが相乗し、アスファルトをしっかり蹴り出す。リアタイヤの幅は、295から325へ広がった。 姿勢制御は引き締まり、トラクションにも不足なし。トラクション・コントロールも、無数といえる細かさで調整できるうえ、トラック(サーキット)・モード時の介入は巧妙。ヴァンテージの圧倒的な動力性能を、思う存分堪能できる。 8速オートマティックは、スポーツ・グランドツアラーとして充分に滑らか。稀に、シフトダウンにもたつく瞬間はあるが、最大トルクは2000rpmから生み出される。低いギアを選ぶ必要性は、必ずしも高くない。 走行時の車内は、上質といっていい。ロードノイズなどは小さくないが、この手のクルマの場合、うるさいと感じるかどうかは主観が大きい。短時間で降りたくなるような音量ではない。 乗り心地は、充分に民主化されている。ダンパーには複数のモードがあり、デフォルトの柔らかい状態なら、舗装のツギハギが多い市街地でも快適と呼べる。ハードに切り替えれば、平滑な路面が必要になるが。 引き上げられたパワーへ注目したくなるが、速度域と足並みを揃えるような積極性や落ち着きが、ヴァンテージの特長といえるだろう。高負荷で実力を発揮するシャシーが、V8エンジンの能力を受け止める。
一層美しく、野性的なアストン マーティン
あら捜しをするなら、60km/hで古いアスファルトを走るような状況は苦手かも。最高速度325km/hのヴァンテージは、こんな環境を好むわけではない。望ましくない揺れが伝わる場面は、ゼロではない。 それでも、間違いなく日常との親和性は向上している。余りの進化ぶりで、異様に感じるほど。 インテリアは一新され、荷室は広い。能力の幅は広く、価格は現実的な範囲。スタイリングは一層美しく、野性的でもある。より長い時間を割いて、真実を明らかにするべきアストン マーティンだと思う。 ◯:驚異的なパワーとサウンド フロントエンジン・リアドライブのバランス 筋肉質で魅了されるスタイリング △:低回転域での僅かなターボラグ
アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)のスペック
英国価格:16万5000ポンド(約3135万円) 全長:4495mm 全幅:1980mm 全高:1275mm 最高速度:325km/h 0-100km/h加速:3.8秒 燃費:8.2km/L CO2排出量:274g/km 車両重量:1670kg パワートレイン:V型8気筒3982cc ツイン・ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:665ps/6000rpm 最大トルク:81.4kg-m/2000-5000rpm ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)
リチャード・レーン(執筆) 中嶋健治(翻訳)