ソフトバンクG、ビジョンFの資産売却進める-AIや半導体にシフト
(ブルームバーグ): ソフトバンクグループのビジョン・ファンドは数十億ドル相当の保有上場株式について、ここ数年でひそかに売却または減損処理を行ってきた。創業者の孫正義氏がかつて熱中していたベンチャーキャピタル取引から、半導体や人工知能(AI)への戦略的投資にシフトしていることを示している。
世界最大のスタートアップ投資ファンドであるビジョン・ファンドは21年末以降、クーパンやドアダッシュ、グラブ・ホールディングスなどの株式売却を進めた。株価下落も影響し、米上場株のポートフォリオは290億ドル(約4兆5100億円)近く縮小した。当局への提出書類から明らかになった。
この数字には、ビジョン・ファンドが保有していた英半導体設計会社アーム・ホールディングスの株式をソフトバンクGに昨年売却した分は含まれていない。ハイテク分野のキングメーカーだったビジョン・ファンドも、従業員を100人余り解雇し、新規投資を過去のペースから大幅に減速させるなど、かつての面影はない。
孫氏は、AIや関連ハードウエア分野への進出の可能性に備え、同ファンドのポートフォリオから資産を売却していると、同氏の考えに詳しい関係者は語った。ソフトバンクGのエクイティーキャピタルマーケットチームは、市場の混乱を最小限に抑えながらビジョン・ファンドの保有株式を現金化するプロセスで中心的な役割を担ってきたと、同関係者は説明した。情報が公になっていないことを理由に匿名を条件に語った。
孫氏が主導する投資の多くは現在、ビジョン・ファンドを迂回(うかい)し、持ち株会社であるソフトバンクGが指揮を執っている。孫氏は以前、2-3年ごとに新しいビジョン・ファンドを立ち上げる可能性を示唆していたが、3つ目のビジョン・ファンド、ましてや4つ目を設立する可能性はもはやないと、同関係者は語った。
ビジョン・ファンドの残りのスタッフは現在、主に管理の役割を果たしている。エクイティーキャピタルマーケットチームが資産売却のタイミングを見計らうことに貢献しており、株式流通市場でのブロック取引を通じて行うこともある。同チームは投資利益を確保し損失を反転させることに注力している。