指示出しても「聞いてませんでした」...伝達ミスはコマンドの出し方を変えれば「攻略」できる
業務フローや新しいタスクを指示しても、誰も実行してくれない...。こんなとき矢面に立たされる中間管理職を救う、オペレーション科学に基づいた「攻略法」とは
数字と時間に追われる中間管理職を待ち受ける、「無理ゲー」とも言えるようなシチュエーションの数々。 【動画】メーガン妃の「背中ぱっくり」をナイジェリア大統領夫人が名指しで痛烈批判 それらは「仕組み」と「着眼点」を頭に入れれば攻略できる、とオペレーション調査会社トリノ・ガーデンの代表取締役、中谷一郎氏は語る。 オペレーション分析の第一人者として知られる中谷氏は、さまざまな業界・企業を分析し、「無理ゲー」攻略のための具体的な施策を著書『中間管理職無理ゲー完全攻略法』(CCCメディアハウス)にまとめた。 40項目から成るそのノウハウの一部を本書から抜粋し、3回にわたって紹介する。本記事は第2回。 ◇ ◇ ◇
無理ゲー:全然伝わっていない
言葉できちんと指示を出したはずなのに、現場に指示内容が全然伝わっていない コマンドを実行してもキャラクターたちが指示通りに動いてくれないのでは、ゲームも展開しない。そんな状況が毎日くり返される。業務フローの変更や新しいタスクについて指示を出しても、誰も実行していない。現場に聞けば「聞いてませんでした」と返ってくる。指示はなぜ伝わらないのか。
攻略法
▶️「そもそも指示しても伝わらない」という前提に立つ 一度話しただけで、相手に正しく記憶してもらえると思うのは、話し手側のエゴであると考えましょう。そもそも人の記憶は不確かなもの。「話してもなかなか伝わらない」という前提に立った上で、記憶に定着しやすくする伝え方の工夫が必要です。 ▶️言葉だけに頼らず、視覚情報を使って伝える 言葉での伝達だけでは、相手に伝わる情報はごく一部です。本当に覚えないといけないことに関しては、画像や動画を見せながら説明するなど視覚に訴えることで状況を理解しやすくなり、また、記憶も定着しやすくなります。
解説
人と人とのコミュニケーションには、限界があります。話し手が思っているほど、相手には伝わっていないものです。昨日話したことでも、「あれ、なんでしたっけ?」ということは、よくあること。大事なことは何度でも伝える必要があります。 我々が普段、現場のオペレーション分析の依頼をいただくクライアントは大手チェーンストアが多いのですが、そうした運営形態の企業では、「来週からお客様へこの方法で新商品をおすすめするように」というような全店通達がよくあります。 しかし、その内容がすべての店舗に100%伝わり、スタッフの行動が変わるということは、まずありません。翌週、各店を見てみると店舗によってすすめ方が違うなど、ばらつきが生じているのです。 伝言ゲームを思い出してみてください。最初の話者が話した言葉が複雑であったり、間に入る人が増えたりすれば、自ずと最後まで正確に伝える難易度が上がります。そもそもこの伝言ゲームは、「言葉は正しく伝わらない」という前提があって、成立しているゲームです。 社内での伝達も、こうした前提に立つことが大切です。たとえば、社長が「○月×日までに全店で必ず○○するように」と部長に通達を出すとします。仮にこの伝言が70%の正確さで伝わるとして、この70%のうち100%が部長からその次の課長へ伝わればまだいいですが、人間の伝達能力は完璧ではありません。 社長で70%であれば、部長もせいぜい同じレベルでしょう。すると社長の言葉が課長に届くときには70%のさらに70%、すなわち49%しか伝わらないことになります。 この要領で7割程度で伝わっていくと考えると、課長が主任に伝える頃には34%、主任が現場のメンバーに伝える頃には24%。これでは、社の決定が現場で再現されるわけがありません。 このように、伝達をくり返すごとに正しく伝わる内容が減少し、社長が支店の巡回に来た時「通達したことが、全然守られていないじゃないか」となってしまいます。そしてその時、矢面に立たされるのは、そうです、中間管理職の皆さんなのです。 現場に伝達すべきことを、「これ、現場に落としといて」と表現することがあります。ピラミッド型の組織において、上(経営者)から下(現場)に情報を下すというイメージなのでしょう。 しかし、情報というのは重力に従って木からリンゴが地面に落ちるように、自然と下りていくわけではありません。 何度も何度も「これでもか」というほど伝えて、ようやく浸透するかしないかというものです。 では、どうすれば「伝わる情報伝達」ができるのでしょうか。