「ペニスは多いけど他はいない」 企業の女性リーダー不在を訴える街頭広告、NYで話題に
米ニューヨークの街頭で始まった、ある広告キャンペーンが注目を集めている。そのキャッチフレーズとは――「ディックは多いけど、他はほとんどいない」。ディックとは、リチャードという男性の愛称のほか、ペニスという意味もある。 この広告を展開する米化粧品メーカーのe.l.f.は、米国企業のトップに女性やマイノリティがあまりいない現状に注目を集めるのが目的だと話す。キャンペーンによれば、米国企業の取締役およそ3万7000人のうち、「リチャード」「リック」「ディック」という名前の男性は約550人いるという。 e.l.f.ビューティーの最高ブランド責任者ローリー・ラムさんは、企業の役員室に誰が座っていて、誰が座っていないのかをより多くの人々に知ってもらうため、このキャンペーンを企画したという。 e.l.f.ビューティー 最高ブランド責任者 ローリー・ラムさん 「人々の関心を引き、ニュースに取り上げられ、影響を与え、人々にインスピレーションを与えるような広告を作成することにした。リチャード、リック、ディックという名前の男性が、過小評価されているグループの人数を上回っているという事実を強調した」 「フォーチュン500社のうち、女性がCEOを務めるのは10%弱だ」――そう語るジェニファー・マカラムさんは、労働力における男女平等を追跡・研究する非営利団体の代表だ。 NGO「カタリスト」代表 ジェニファー・マカラムさん 「女性は男性と同じ割合で職場に参入している。第一線のリーダーになる最初のレベルでは、男女比はほぼ半々からスタートし、すぐに60%・40%と男女比が偏る。つまり問題は早い段階から始まっている。そのためこの問題はCEOレベルまで悪化をたどる」 米労働統計局によると、女性の平均収入は男性のおよそ84%だ。ピュー・リサーチ・センターは2023年に、「米国における賃金の男女格差は過去20年ほど、大きく変わっていない」との報告を発表した。 e.l.f.ビューティーの取締役会は3分の2が女性で、残る3分の1は多様な人材で構成されているという。「私たちが調査した結果、取締役会において性別の多様性がある企業はそうでない企業よりも、財務面で優れた業績を上げる可能性が27%高いことがわかった。さらに民族的に多様な取締役会は、そうでないところよりも優れた業績を上げる可能性が13%高い。つまりこれはビジネスにとって良いことなのだ」(ラムさん)