旧車スーパーカブ☆キャブのネジ山がナメてしまった時の恒久的修理法
有効ネジ部の深さで強度が変わる
一般的にネジ径をDとしたときに、1.5Dのネジ山寸法があれば、標準締め付けトルクは確保できる(今回の場合は6ミリ×1.5=9ミリ)のだが、このフランジの厚さは同程度なので、理論上では締め付けトルクは確保できる。しかし、何度も脱着を繰り返し行い、オーバートルクになってしまうとネジ山は傷みやすく、今回のように完全なナメ状態になってしまうこともある。リコイルがボルトを受けることで、こりまでのアルミダイキャスト部品と比べたら、圧倒的な強度アップを期待できる。リコイル作業時の注意点は、インサートの端がフランジ側やボルト側へ飛び出さないことだ。挿入作業は、慎重かつ丁寧に行おう。 ────────── POINT スーパーカブ×メンテの世界・長年乗り続けられテイルバイクとなれば、同じ部品を何度か分解メンテナンスされたことがあるはずだ。鉄部品ならまだしも、相手がアルミ部品やアルミダイキャスト部品の場合は、ネジ山にダメージが及んでいるケースが多い。ネジ山周辺に最低限しか影響を及ぼさないリコイルならば、理想的な修理再生が可能になる ────────── キャブボディの内部通路が詰まったことで、アイドリングが不調になってしまい、キャブの分解洗浄やオーバーホールを経験したことがあるサンメカは数多いと思う。また、抜けが良いマフラーへ交換したら、プラグが白く焼け気味になったので、メインジェットを交換して「ガスを濃くしてみた」などの「キャブセッティング」を経験したことがあるライダーも数多いはず。そんな作業を繰り返し行ううちに、ここでリポートしている状況と似たようなトラブルに見舞われてしまうことがある。旧車スーパーカブに限らず、1980年代前半以前に登場したキャブモデルの場合は、実は、こんなトラブルが数多かった。 キャブ本体を繰り返し脱着、しかもボルトを締め付ける相手がアルミダイキャストボディとなれば、ネジ山は間違いなく傷みやすい。一般的に、M8サイズ以下のボルトは「オーバートルクで締め付けてしまう」傾向もある。そんなネジ山トラブルが多かったことから、1980年代の後半以降、似たような構造のキャブレターは、フランジ固定のネジ山部分のみ鉄製のナットプレートをセットして、傷みにくい仕様へと変更されている。おそらくメーカー直系のディーラーメカニックから、改善の打ち上げがあり、対策部品へと変更されたのだろう。 旧車に触れる機会が多いと、スーパーカブに限らず「ネジとの戦い」になることが多い。ボルトが緩まないので、チカラづくで緩めた結果「ポキッ!!」と折れてしまった経験を持つメカニックも数多いと思う。様々な高性能ケミカルや熱膨張を駆使することで、固着したボルトを取り外すことができる場合もあるが、必ずしも思い通りにならないのがネジトラブルなのだ。ここで紹介するナメたネジ山の修理再生は、おそらく修理レベルでは決して難しい部類ではない。こんな部分がナメてしまったら、おそらく長いボルトに交換して、ボルト×ナットで挟み込むように締め付け固定するのが一般的な対策だと思うが、本来のネジ山が再生されて生き返ると、それはもう整備性が良くなり「ネジ山修理して良かった!!」となる。こんなトラブルは、修理チャレンジしてみよう。
たぐちかつみ