なぜ負けた?渡部暁斗が狙う銀メダルコレクター返上の算段
フレンツェルは、欧州と日本間の長距離移動と時差を防ぐために五輪直前のW杯白馬大会をキャンセルして、ゆったりとドイツ国内調整に徹した。今季はW杯でわずか1勝、総合ランキングで8位と低迷していたが、休養期間を作りスタミナを温存し、ピークを平昌五輪に持ってきたのである。一方、渡部は地元開催の“前哨戦”で全力を出した。このW杯白馬大会の2戦目で優勝したノルウェーのエース、シュミットも、スタミナが持たずにあっさりと敗れ去った。 4秒8。 フレンツェルの背中を追いながらのゴールは4年前のデジャブのようだった。 ソチ五輪のフレンツェルとのタイム差も4秒である。 同じ銀メダル。ほぼ同じタイム差。 だが、渡部にとって、同じ銀でも、その意味合いは違っていた。 「喜びと安心感が半分、そして、悔しさが半分。次のラージヒルで金をとってやろうという気持ちに今なれている。そこが前の銀メダルとの違い」 W杯で4連勝を含む5勝、総合ランキングでは、まだ数試合を残しながらも1位で平昌五輪を迎えた。この4年間の差を埋めるべく、オフには練習に相撲の四股を取り入れ、トレイルランで山を走り、マウンテンバイクに跨がり、ボルダリングもやった。「足裏の感覚とバランス感覚を身につけるため」にと、湖の上でボードに立ったままの格好で乗ってパドルをつかって漕ぐ「スタンドアップパドルボード」にも挑戦した。他種目競技でノルディック複合では使わない筋肉を鍛え、刺激を与えることに加え、気分転換と「楽しむ」という感覚を保つことも夏場のモチベーションを維持するためには重要だった。 冬場でも「テレマークスキー」を積極的にやった。いわゆる「心技体」の充実である。 同じ4秒差、同じ銀メダルでも、そこで燃え尽きていたソチ五輪での渡部と、次のラージヒルで金メダルを獲得する資格を持っている渡部では、今現在が違うのである。 だからこそ「次のラージヒルこそは、しっかりと結果を出したい! ジャンプが好調なら20秒の差で行けるはずです」と、20日に行われるラージヒルでのリベンジを口にできる。 「思い切り跳べるジャンプが大好き」と言う渡部は、本来、ラージヒルが得意種目だ。ノーマルヒルよりも後半のランへ向けて秒数のリードを稼ぐこともできる。 「得意のジャンプで首位につけて、それもラージヒルですから、タイム差をつけることができるかもしれない。いや、そうしていく!」 それこそが金メダルへの絶対条件となる。