住民税非課税世帯の35%は65歳以上、「優遇措置」には何がある?
厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査(所得・貯蓄)」によると、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)は、60歳代19.2%、70歳代34.9%、80歳代44.5%となっています。また「65歳以上のリタイア世帯」という枠組みで考えると、35%が住民税非課税世帯です。 さらに後期高齢者医療制度の加入年齢となる75歳以上の場合は、42.5%が住民税非課税世帯となります。そのような住民税非課税世帯には「優遇措置」があります。ここでは、住民税非課税世帯に「該当する要件」および「優遇措置」の主なポイントを解説していきます。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
年金世帯が住民税非課税世帯に該当する要件
東京都主税局によると、住民税が非課税になる要件は、以下のように定められています。 例えば、所得割・均等割とも非課税になる場合(1級地)を見てみましょう。 ●同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下 ●同一生計配偶者又は扶養親族がいない場合:45万円以下 年金受給者の住民税非課税限度額の基準は所得以外にも、住んでいる地域によって異なる点に注意しましょう。 厚生労働省は「級地区分」を設けており、「1級地」(大都市)「2級地」(中核都市)「3級地」(上記以外)といった区分により、住民税が非課税となる年金額が変わります。 〇高齢者(65歳以上)単身世帯 ●1級地:155万円 ●2級地:152万円 ●3級地:148万円 〇高齢者(65歳以上)夫婦世帯 ●1級地:211万円 ●2級地:203万円 ●3級地:192万8000円 ※2級地については、函館市(2級地)において住民税非課税となる合計所得金額に、65歳以上の公的年金等控除110万円を加えたもの。 自分の級地区分を把握し、住民税非課税世帯となるボーダーラインは意識しておきましょう。
住民税非課税世帯の「優遇措置」には何がある?
住民税非課税世帯に該当すると、どのような優遇措置があるのでしょうか。順番に見ていきましょう。 1.国民健康保険料・後期高齢者医療保険料が安くなります 保険料は住んでいる地域によって異なります。住民税非課税世帯の場合は、そのうち「均等割」が7割、あるいは5割・2割に軽減されるなど、多くの自治体で減免措置が設けられています。 2.介護保険料が安くなります 介護保険料は、自治体ごとに異なる基準額を基に、各人の収入に応じ保険料が設定されます。住民税非課税世帯は、基準額より低く設定されています。 3.介護保険施設の費用が安くなります 住民税非課税世帯に該当すると、介護保険施設やショートステイなどを利用するとき、食費や居住費が軽減されます。ただし、軽減を受けるには、年金収入の基準だけでなく、預貯金額の基準を満たす必要があります。 たとえば、年金収入が120万円超の場合は、持っている預貯金などが、単身で500万円、夫婦で1500万円以下でないと、軽減を受けることができません。 4.高額療養費制度の限度額が下がり、医療費の負担が軽くなります 高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、1月(月の初めから終わりまで)の上限額を超えた場合に、その超えた金額分が支給される制度です。 住民税非課税世帯になると、医療機関などの窓口で支払う自己負担額の1ヶ月の世帯ごとの上限額が70歳未満の場合は3万5400円に、70歳以上の場合で2万4600円(年金収入が80万円超の場合)になります。 5.高額介護サービス費の限度額が下がり、介護サービス費の負担が軽くなります 介護保険が適用される介護サービスの自己負担額が高額になった場合、申請によって自己負担限度額を超えた分の支給を受けることができます。 住民税非課税世帯は、1ヶ月の介護サービス利用料の負担額は、世帯で2万4600円(年金収入が80万円超の場合)となります。