映画『ナミビアの砂漠』河合優実×山中瑶子監督が語る、他人との向き合い方「いろんな人に対して誠実に接したい」
河合優実が主演を務める映画『ナミビアの砂漠』が9月6日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショーされる。同作は第39回ぴあフィルムフェスティバルにて、PFFアワードで観客賞を受賞し、第68回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に史上最年少で招待された『あみこ』の山中瑶子監督による作品。世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている21歳のカナが、自分の居場所を探していく物語だ。 【写真を見る】映画「ナミビアの砂漠」主演の河合優実と監督を務めた山中瑶子 今回は河合と山中監督にインタビューを行い、映画の制作に至った経緯やお互いの印象、お2人が他人と関わる上で大切にしていることなどを語ってもらった。 ――今回の『ナミビアの砂漠』はどのようなきっかけで制作に至ったのでしょうか? 山中「もともとは河合さんが主演を務める予定の原作モノの企画だったのですが、昨年の5月ぐらいに今の自分が撮るべきではないと思って降りたんです。そこでプロデューサーに『ずっと河合さんも待ってくれていたし、スケジュールも空けてくれていたから、河合さん主演でオリジナルの映画をやりませんか?』というお話をいただいて、企画変更して制作することになりました。どんな河合さんが見たいかなと想像を膨らませながら、カナというキャラクターを思いついて、物語を組み立てていきました」 ――河合さんは山中監督の『あみこ』に感銘を受けて、山中監督の作品に出演したいという思いを伝えたそうですが、今回共演されてみてどんな印象を持ちましたか? 山中「『あみこ』の時は無敵感のあるギラギラした高校生が来たなと思ってたんですけど、今はもう素敵な大人になって、柔らかくなりましたよね。とても地に足のついた方だと思います。そもそも数年前にほんの数分お会いしただけですけれどそれでも年月を感じました。感無量です」 河合「6年前にお会いした時はすごく短かったので、ちゃんとお話しするのは初めましてだったんですけど、ずっと魅力を感じていた監督だったので、まずはご一緒できて嬉しかったですね。6年越しに会ってみて全然気が合わない人だったらどうしようと思ってたんですけど、いろんなことをお話してくれて、波長が合う監督で良かったなって思ってます」 ――カナは暴力的なのにどこか惹かれてしまう不思議な魅力を持った女性です。カナの印象と演じる上で意識したことを教えてください。 河合「最初は実在する人としてというよりは、映画に出てくる主人公とかキャラクターとして面白い人だなと読んでいて思っていたので、自分が今、本から受けてる印象を一番いい形で演じるにはどうしたらいいかなというところから考え始めました。多くの人からは日本映画で見たことないタイプの主人公と言っていただけることが多いですけど、私も読んだ時にそう思ってたので、それがちゃんと伝わってよかったなとホッとしています。もちろん演じる時にもそれは意識はしてたんですけど、奇をてらってというか、別に変なことをやるだけでも面白い人にはならないと思っていたので、最終的にはまっすぐに演じることを心がけました。私たちと同じ東京に実際にいるような人にしたいというリアリティとキャラクターとしての面白さを両立させられたんじゃないかなと思います」 ――カナの生き様を通して社会は自分中心ではなく上手くいかない事もある中で、どう他人と距離をとって折り合いをつけて過ごしていくのかというメッセージ性を感じました。お2人は他人と関わる上で意識していることはありますか? 河合「難しいですね...。でも、絶対に人生は1人では生きていけないし、人のことをうまく愛せないって思っていても、絶対に必要としてると思うので、漠然としていますけど、いろんな人に対して誠実に接したいと思ってますね。生きている中でそうじゃなくなりかける時って誰しもあると思うんですけど、そういう時にこそ誠実に向き合うことを心がけています」 山中「最近やっと自分も柔らかくなってきたなと感じていて。以前はちょっと尖っていたので、あんまり喋りたくない人とは喋らないし、話したくないことは話さないし、と思えば全然思ってもないことを言ってみたりとかしていたのが、こちらが素直に話せば向こうも素直に話してくれるんだなというのを実感することが増えて。あと、この人はきっとこう思っているからこう言おうとか、相手の気持ちを先回りして考えて疲れることが今まではあったんですけど、他人の真意はもうわからないことだからあんまりそういうことばかり考えても仕方ないなと気づくようになってからは随分とラクですね」 ――それはターニングポイントがあったんですか? 山中「うーん、きっとその時は単に人疲れをしてたんですよ。コロナで会う人も制限される期間が長くあって、自分と向き合う時間ができたのは良かった。その間に自分の凝り固まった考えが手放せたのもあったし、その後久しぶりにいろんな人と会ったらそれはそれで嬉しくて、それまでの嫌なこと全部忘れちゃった!みたいなことはあるかもしれない(笑)」 取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI ▼河合優実様スタッフクレジット HM:上川 タカエ(mod'shair)/Takae Kamikawa(mod'shair) STY:杉本学子/Noriko Sugimoto
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