日本人の「腎臓がん」の70%に未知の発がん要因!? 世界11カ国の調査で判明
腎臓がんとは?
編集部: 今回の研究テーマになった腎臓がんについて教えてください。 村上先生: 腎臓の細胞が、がん化したものが腎臓がんです。腎実質の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものが「腎細胞がん」で、腎盂にある細胞ががん化したものが「腎盂がん」です。腎臓がんのほとんどは腎細胞がんなので、一般的に腎臓がんと呼ぶ場合は、腎細胞がんのことを指します。腎細胞がんは、肺に転移しやすく、骨や肝臓、副腎(ふくじん)や脳などに転移することもあります。 日本国内の腎臓がんの患者は、2019年には2万1347人が新たに診断されています。腎臓がんは初期段階ではほとんど自覚症状が出ないので、早期発見されるケースの多くは健康診断などで偶然、発見されます。腎細胞がんが大きくなると、血尿や背中などの痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気や便秘、腹痛などが起きることもあります。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 国立がん研究センターらの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。 村上先生: 腎細胞がんは以前、抗がん剤や放射線治療が非常に効きにくく、唯一の治療が手術とインターフェロンしかないという時代が長く続きました。その後、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤といった新しい治療方法が登場しました。しかし、患者さんの予後は改善してきているものの、いまだ十分な治療効果があげられているとは言えない状況です。 今回の研究が、腎細胞がんの新たな原因の追究につながるとともに、そこから新しい治療方法が見つかり、腎細胞がん患者の予後の改善へとつながることを期待しています。
編集部まとめ
国立がん研究センターらの研究グループは、世界11カ国の腎臓がん患者のがん細胞を全ゲノム解析したところ、日本人患者の7割に特有の遺伝子変異があったことを発表しました。腎臓がんは日本でも毎年2万人以上の患者が報告されているので、今後の研究により新たな治療法が開発されることに期待が集まっています。
【この記事の監修医師】
村上 知彦 先生(薬院ひ尿器科医院) 長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科