「エネ業界はマーケできてない」アクセンチュアが提言“顧客視点に立つべき”
電気やガスが日々滞りなく供給され、世界で最も停電が起こりにくい国と言われる日本。 それでも、電力・ガス会社に不満を抱く消費者の割合が日本は世界に比べて高いことが、最新の調査で分かった。 【全画像をみる】「エネ業界はマーケできてない」アクセンチュアが提言“顧客視点に立つべき” アクセンチュアが10月31日に公表したエネルギー消費者調査「ネットゼロに向けた課題と可能性」によると、日本では「料金の手頃さ」を優先する傾向がみられた。 日本の消費者が東京電力や東京ガス、新電力といったエネルギー小売会社に求める最優先事項は、「光熱費の割引」や「停電のない安定した電力供給」など「手頃な料金で信頼性のあるエネルギーの供給」に関するもので62%だった。 残りの38%の消費者が最優先として考えているのが、「二酸化炭素の削減」だった。 具体的には「CO2排出量削減による地域社会や地球の支援」や「クリーンエネルギーにつながる製品やサービスのコスト比較ツールの提供」など、「エネルギー関連商材に関する信頼できるアドバイザーとしての活動」を最も重視していた。 注目されるのは、それら優先事項に対する消費者満足度の結果だ。日本はほぼすべての項目において世界平均より低かった。 また東京電力のデータ(図2参照)が示すように、日本の停電回数はドイツやイギリス、アメリカニューヨーク州などと比べても少ないにもかかわらず、今回の調査では「停電のない安定した電力供給」でさえ、世界の満足度が68%だったのに対し、日本は66%という結果だった。
顧客ニーズを把握できていないという現実
なぜ日本の消費者満足度は低いのか。 アクセンチュア素材・エネルギー本部統括本部長の竹井理文氏は、 「エネルギー小売会社が(自らの)提供価値を消費者にリーチできていない、マーケティングできていない現状が読み取れる」 と話す。 特に、ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた課題として、ビジネスコンサルティング本部ストラテジーグループのマネジング・ディレクター、藤野良氏は大きく2つあると指摘する。 「1つは、エネルギー小売会社のコミュニケーションの仕方がプロダクトアウト(製品や技術を起点に提案すること)寄りで、企業側が売りたい脱炭素商材をアピールする形になってしまっていること。 行動変容につながっていない顧客を掘り起こしていくためには、顧客視点に立ったコミュニケーションの仕方が極めて重要だが、それができているエネルギー小売会社は多くない」(藤野氏) もう1つは、エネルギー小売会社は膨大な顧客データを持ちながら、肝心の顧客ニーズを把握できていないという点だ。 「脱炭素に関して、おそらく個々の顧客がどの程度の関心度や許容度があるかを把握できておらず、その状態でコミュニケーションをしている状況だと捉えている。個々の顧客をしっかり見極めながらアプローチの仕方を考えていく余地がある」(藤野氏)
湯田陽子