見たら幸せ? ドクターイエロー風電車の正体は…
【汐留鉄道倶楽部】「見たら幸せになれる?」と、黄色の電車を眺めながら自問自答した。といっても、東海道・山陽新幹線で活躍する黄色がベースの検査用車両「ドクターイエロー」のことではない。米ワシントン首都圏交通局の地下鉄「ワシントンメトロ」に在籍している電車のことだ。 5月19日開業のワシントンメトロで98番目の駅、ポトマックヤード駅(バージニア州)の内覧会に参加した。ブルーラインとイエローラインの2路線が乗り入れる橋上駅舎から対面式ホームを眺めていると、ワシントン方面へ向かう見慣れない黄色の電車が近づいてきた。 外観の色合いこそドクターイエローに似ているものの、お仕事の内容は旧日本国有鉄道(国鉄)と分割民営化後のJRグループの路線をかつて駆けていた青色の客車「マニ30」と似ている。首都圏交通局の黄色の電車は「マネートレイン」、つまり英語で「お金の列車」を意味する現金輸送車両なのだ。 マネートレインは、フランスの大手鉄道車両メーカー、アルストムが製造した「6000系」の2両編成。私が目撃した際はアルミ合金製の銀色の車体に茶色の帯が入った通常塗装の2両と連結した4両編成で走っていた。内覧時のポトマックヤード駅は開業前だったため、他の営業用電車と同じように通過していった。
マネートレインについて探ろうと首都圏交通局の広報担当者に問い合わせると「6000系の1編成だけを保有している」と教えてくれた。しかし、どのように運用をしているのかは「保安のため開示することはできない」とすげなく断られた。 口が堅いのは仕方がない面もあるかもしれない。日本銀行が印刷された紙幣を国内の支店へ運ぶのに使っていたマニ30に関し、日銀のホームページは「実際に使われていた期間中(2004年3月末まで)はベールに包まれ、秘中の秘とされていた」と存在すら隠していたことを明かしている。マニ30が駅で停車中に写真撮影を試みた鉄道愛好家が、乗り込んでいた警備員から「撮らないでください!」と制止されたとの逸話も聞いた。 これに対し、首都圏交通局はマネートレインの存在ははっきりと認め、私が目撃時にカメラのシャッターを切っても全く注意されることはなかった。マニ30ほどはタブー視されていない様子だが、詳しい実態が秘密のベールに包まれていることには変わりない。