<世界遺産>富士山の入山料導入は妥当?
富士山は7月1日、世界文化遺産に登録後初の山開きを迎えました。静岡県と山梨県は、今夏に富士山入山料を試験的に導入します。入山料導入によって、富士登山はどう変わっていくのでしょうか。
海外では珍しくない入山料
入山料が試験的に導入される期間は7月下旬~8月上旬の10日間で、金額は1000円です。対象となるのは、富士山の山頂をめざす登山者。任意の協力金として各登山道で係員が受け取り、協力者には記念バッジなどを渡すことを検討しています。静岡・山梨両県は、この試行の結果を踏まえて、2014年夏から本格的に利用者負担金制度(入山料)を導入する予定です。 海外では、環境保全などを目的に入山料を徴収することは珍しくありません。富士山と姉妹提携するアメリカ・ワシントン州のレーニア山(4392m)では、国立公園入園料として自動車1台あたり15ドル(約1460円)を課しています。アフリカ最高峰として知られるタンザニアのキリマンジャロ山(5895m)はさらに高額で、外国人の国立公園入園料は1人あたり70ドル(約6820円)です。こうした例と比べると、現在検討されている1000円という入山料は決して高くないといえるでしょう。
わずか1000円では効果がない?
富士山で入山料導入が検討される背景には、登山者の持ち込むごみや屎尿によって、山頂付近の環境が悪化している現状があります。環境省の発表によれば、2012年7~8月の富士山登山者数は約31.9万人。調査を開始した2005年の約20.0万人から大幅に増加しています。世界遺産登録によって登山者は今後ますます増えると予想され、環境対策が急務となっているのです。入山料導入によって、登山者抑制と環境保全費の財源確保という「一石二鳥」の効果が期待できます。 しかし識者からは、入山料1000円では抑制効果は限定的だと指摘する声も上がっています。京都大学農学研究科の栗山浩一教授らは、入山料1000円による訪問者数の抑制効果は約4%に留まるという推定結果を公表。仮に世界遺産登録で訪問者数が30%増加した場合、現状の水準までに訪問者数を抑制するには、少なくとも一人あたり7000円の入山料が必要だとしています。 行政側にも、追加の規制を検討する動きがあります。静岡県の川勝平太知事は、「今年中に登山の在り方から見直し、適正な人数を考える」と発言。入山料徴収からさらに一歩踏み込み、登山者の総数規制を検討していく考えを示しました(静岡新聞6月24日)。 世界遺産登録で、ますます注目の集まる富士山。環境保全と観光振興という相反するテーマをどう両立させていくか、関係者の試行錯誤が続きそうです。