「多くの人からバカじゃねえかと言われましたけど…」“ベイスターズの故郷”山口県下関で「ファンのための豚丼屋」を開いた「ある熱狂的ファン」の話
クライマックスシリーズでの怒涛の5連勝などで日本シリーズまでたどり着いた横浜DeNAベイスターズ。熱狂的なファンも多い同球団だが、その裾野は地元・神奈川だけではない。「原点」ともいえるチーム誕生の地・下関に店を開いた、とあるプロレスラーの話。《全2回の2回目/最初から読む》 【現場写真】ホエールズ「生みの親」の銅像も⁉…お宝グッズも満載“ナゾのプロレスラー”が下関に開いた豚丼屋「B☆WHALE」の超個性的な内観…1998年&2024年の日本シリーズでの横浜ナインの活躍も見る 下関に根付いたベイスターズファンの「熱」に気づいた西口プロレスのレスラーであるラブセクシーヤングは、地元で店を開くことにした。 しかし、下関で店をやるということは、神奈川から帰って来なければならないということ。これまで23年、やってきた西口プロレスは辞めたくない。ヤングは長州小力、アントニオ小猪木らに「西口を辞めずに下関で店をやりたい」と相談した。 「いいんじゃね。リモートだし」 世の中はコロナ禍だった。月イチの会議はリモートで、年に数回参戦するために東京へ行くということであっさり認めてくれた。不幸中の幸いでもあったが、コロナ中に飲食店を志すというのもかなりの逆境ではあった。
下関に「ベイスターズの豚丼屋」をオープン
2023年8月23日。下関市観音崎町、ベイスターズが日本一のパレードを行った通りにある雑居ビルの2階に豚丼屋「B☆WHALE」はオープンした。店の名は「B☆」ベイスターズと「WHALES」をつなぐという意味を持ち、キャラクターの豚はどことなくTBSのキャラ「ブーブ」を思わせる。 オープニングセレモニーは、東京から駆け付けてくれた長州小力VSアントニオ小猪木のエキシビジョンマッチが行われ、『大洋ホエールズ誕生! 』などの著作を持つ地元の大洋ホエールズの歴史を記録する下関の会代表の佐竹敏之さんからは「これは君が持っていた方がいい」と中部兼市(※大洋ホエールズの初代オーナー)の胸像がプレゼントされるなど、華やかな雰囲気のなか、幸先のいいスタートを切った。 どうせベイスターズの店をやるなら、ただ集まるだけじゃなくて、日本一の店を出したい。 そんなヤングが絶対的な自信を持って選んだのが豚丼だった。神奈川に出てから用賀のブタリアンレストランで17年働いたノウハウと、地元山口県の『萩むつみ豚』。そして、米は下関市内で農業を営む平田真吾元投手(現アナリスト)のおじが作った『平田米』(キヌヒカリ)という最強の布陣。これが評判にならないわけがない。 ところがである。オープンこそロケットスタートを切ったと思ったのも束の間。開幕して1カ月も経たないうちに、15年前にハマスタに居た閑古鳥が自分の店に居ついてしまっていた。 原因はいくつかあった。 全体的に夜が早めで、繁華街から離れているということもあるが、最大の原因は「何の店かわからない」ということであろう。WHALEと名乗っているのに、豚丼の店だ。関門海峡に臨む高級ラウンジのような素晴らしいロケーションながら、店中にはそれを相殺するように、ユニフォームやベイスターズグッズが展示され、中央にはマルハのどでかい大漁旗が鎮座。 店主は「やるぞ大洋勝利花」とか軍歌みたいな鼻歌を歌っている。「噂では長州小力とアントニオ小猪木が試合をやっていたらしい」という謎情報も混乱に拍車をかけ、店の階段からは毎日のようにクジラ料理を食べに来た外国人観光客が、何人も首を傾げて帰っていくという謎の店になっていた。 それでもヤングは諦めなかった。いや、諦めさせてくれなかった。 幸いなことに豚丼を食べた人の多くはリピーターになってくれたし、アルバイトの若い子たちも頑張ってくれている。そして何より、噂を聞きつけた下関の大洋ファンやマルハニチロ、林兼商店の関係者が、この店を訪れ、「ありがとう。がんばってほしい」と応援してくれるのだ。
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