城氏が現地で見た歴史的名勝負。C・ロナウドの何がどう凄いのか?
チーム力で言えば、テクニカルなスペインがポルトガルを上回っていた。高いボールポゼッションを保ちながら細かいパスワークでポルトガル守備の小さな穴を探っていく伝統の「ティキ・タカ」というプレースタイルは、監督が、2日前に交代しようが何も変わらなかった。その熟成したパスワークは速くて上手い。浮いたボールさえコントロールした。「ティキ・タカ」は、もはやトレンドではない、という声もあるが、それらの意見を超越しうる次元の違うサッカーだ。 中でもW杯後、神戸でのプレーが決まっているイニエスタの存在感が際立っていた。 パスは、すべてイニエスタ経由。W杯王者となった8年前は、攻撃の3枚目になってボールを受け前へ行く推進力にもなっていたが、34歳となった現在は、パサーに専念して司令塔としてボールをさばいた。 少し話は脱線するが、神戸で今のプレースタイルのイニエスタが果たして力を発揮できるのか、という不安はある。神戸は、ボールポゼッションをするチームカラーではない。チームが、どうイニエスタにあわせるのか、逆にイニエスタがチームをどう動かすのか、が興味深い。 2ゴールを決めたジエゴ・コスタというストライカーの決定力も見逃せない。決してスピードや上手さを持ったストライカーではなく、序盤はうまくチームにマッチできずリズムにも乗れていなかったが、前半24分に3人のマークを2度の切り返しで振り切って同点ゴールを決めた。ポイントはロングボールをペペと競り合ったプレーにある。ボールを競り合う寸前に、先にペペに体を当てて、その動きを殺しておいたのだ。結果、ヘッドでボールを落としたぺぺは、転倒。コスタが、ボールをキープすると、そのままドリブルでゴールに向かったわけだが、考え尽くされた反則ギリギリのコンタクトプレーだったのである。後半10分、2-2の同点ゴールも、ゴール前に詰めてくる嗅覚がさすがだった。 監督就任3日目のイエロはベンチ前に出て非常に細かい指示をしていた。ゴールキックの際のポジショニングや、「前へ行く」タイミングまでを指示していた。電撃的な監督交代の影響はないように思えた。 おそらくスペインは、このグループBをトップで抜け出すことになるだろう。ブラジル大会は、まさかのグループリーグ敗退となり、国民の期待を裏切ったが、今回は優勝候補と呼んでいいのではないか。 決勝トーナメントでは、グループAの開幕戦で大勝した地元ロシアか、ウルグアイと対戦することになるだろうが、そこも乗り超えていきそうな完成度がある。 逆にポルトガルは、ロナウド頼みに思えた。堅い守備からのカウンターというチームスタイルゆえに、ロナウドが、どれだけゴールを量産できるかという点に左右されそうだ。足がつったのか、アディショナルタイムに倒れこんでいたが、ポルトガルの進撃はロナウドの大会を通じてのコンディション次第なのかもしれない。 (文責・城彰二/元日本代表FW)