「もっと私を身近に感じてほしい」松井玲奈がエッセイ『私だけの水槽』に書いた“2年間”
私が書きたいことを書く
――3年前に刊行された『ひみつのたべもの』は、アイドルから俳優になった松井玲奈の初エッセイ集、という意味合いが強かったと思います。今作は、「作家・松井玲奈のエッセイ集」を意識されましたか? 初エッセイの時も今回も、肩書きはまったく気にしてないです。大切にしているのは、「私が書きたいことを書く」、ただそれだけです。 ただ、「作家、エッセイストの松井玲奈」としてお仕事をいただく機会が増えたことで、これまで以上にアンテナを張ってどんなものが自分の心に響くか、どう書いたら嘘がないエッセイが書けるだろうかということは、より考えるようになりました。 とくに今回のような連載ものは、単発のエッセイ以上に責任も大きいですし、それなりのプレッシャーもあります。それでも、限られた文字数のなかで、毎回「いま何を書きたいのだろう」と自分に向き合いながら考える作業はとても楽しかったですし、充実した時間となりました。 ――お忙しい中、どのように執筆の時間を確保されているのですか? 私はエッセイでも小説でも締切がないと書けないタイプなんです。なので、「時間ができた時に書いてください」と言われたら逆に書けないかもしれません(笑)。 今回は、そんな忙しくて気持ちの余裕が持てないことや、自分のダメなところも書いてみようと、ぐーたら人間ぶりや、現実逃避で掃除に走ってしまうことなども入れました。今にして思えば、こうした自分のダメな部分を書くことで心のバランスを取っていた部分もあったのではないかと思います。 ――松井さんにとって「書く」ことにはどんな意味があるのでしょうか。 自己表現のひとつです。もちろん文章を書くのは好きですが、「すごく楽しい」と思って書いているというよりは、心の整理をするために書いているところが大きいと思います。 以前はブログを書いていましたが、エッセイを書くようになってからはブログもやめてしまったので、自分が感じたことや自分に起きたことを書き留める場所として日記を書いています。 自分の中に言いたいことがモヤモヤと溜まり、身体の巡りが悪くなると具合が悪くなるので、日々の思いを形にして可視化できる場として、どんなに短くても毎日、日記を書くようにしています。いろいろなことをちゃんと覚えておくための記録としても役立っています。 あとは、自分を知ってもらいたい、自分の気持ちを正しく伝えたいという思いで文章を書くことも多いですね。 私は、昔から「自分を人に知ってもらいたい」という気持ちが強いのですが、その根底にあるのは承認欲求ではなく、人が自分に持っている印象と、自分が持っている自分のずれを少しでも少なくしたいという思いがあるからです。 自分を正しく届けることで、私のことを正しく理解してもらいたい。その一心で、昔から「今こんなことを考えています」「こうしたいと思っています」「これが目標です」と、逐一発信してきました。 エッセイを書くようになってからは、もっと私を身近に感じてほしいという思いがさらに強まり、自分が悩んでいることや、つまずいたこと、嬉しかったことも正直に書いています。