ジムニーの本領を発揮する雪道ドライブ! でも、意外な落とし穴が?
本格オフローダーとしての高い走破性をもつスズキ・ジムニーは日本国内なら大抵の悪路を突き進むことができるだろう。しかし、最もジムニーの性能を体感できるはずの雪道で「意外な落とし穴」が存在する。深雪でのスタックなどの緊急事態に冷静に対処できるよう、ポイントを確認していこう。 【写真を見る】進化したESPが雪道のジムニーに与える影響を図解。※本文中に画像が表示されない場合はこちらをクリック TEXT:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO:SUZUKI/Pixabay
便利になった電子デバイスが雪道で悪さをすることもある!?
スズキ「ジムニー」をオーナーで、今年初めて雪道に出かけるという人も多いだろう。その上、ジムニーの身上であるパートタイム4WDを、雪道で初体験する人がほとんどではないだろうか。 激しく荒れた道や泥濘路がほとんどない日本においては、最もジムニーの性能を体感できるのは雪道となる。現行型ジムニーは、ESP(スズキの横滑り防止装置の名称)やブレーキLSDトラクションコントロールを装備し、走行安定性や悪路走破力の面で旧型を大幅に上回っている。 こと、スタック脱出性能という点では、オフロード走行の知識や経験のないユーザーでもその実力を余すところなく享受できるようになった。しかし、便利になった一方で、ドライバーが知らずして電子デバイスの落とし穴にはまっていることもある。
「ESP」は諸刃の剣、状況に応じて上手く使い分けが必要
例えば、深雪におけるスタックだ。駐車中に大雪が降り、気がつけば駐車場から出られなくなったということが降雪地帯では多々ある。また、ちょっと深めの積雪エリアに入り込んだら、スタックしてしまったということも。そこで、すかさず「4H」にシフトして脱出を試みるが、アクセルを踏んでも一向にクルマが進まない…という憂き目に遭うはずだ。 実はこの要因を作っているのは、他でもない「ESP」なのである。ESPはクルマのヨー状態を各センサーで検知し、その状況に合わせてエンジン出力や制動力を自動制御する電子デバイス。コーナリングなどを安全に行えるようにし、特に積雪路や凍結路で威力を発揮する。 ESPの機能のひとつであるのが、ブレーキLSDトラクションコントロール。これは「4L」にシフトする初めて作動するのだが、ESPとは大きな差がある。ESPはそもそも走行中の車両安定性を目的にしたプログラムであることから、積極的にエンジン出力や制動力に干渉してくる。 一方、ブレーキLSDトラクションコントロールはスタック脱出に必要なエンジン出力(駆動力)の制御は発進時のみで、基本的にはしない。空転したタイヤにブレーキをかけることそれを止め、トラクション性能を回復させるという機能だ。 つまり、4Hでスタックから脱出する際には、不要な制御介入してくるESPをOFFにしないと、いくらアクセルペダルを踏んでも駆動力はカットされるばかりなのである。これをOFFにしていないがために、脱出が容易なスタックで四苦八苦している人をよく見かける。 また、こんなケースも。降雪地の山間部ではツルツルに凍結している急坂に出くわすことがあるが、こうしたシチュエーションでは勢いを付けて一気に登ってしまいたいものだ。しかしESPをカットしていないと、登坂の途中でタイヤが空転すると途端に出力がカットされ、パワー不足で登れないという事態に見舞われる。凍結が酷い坂道で止まってしまうと、後退もままならず、想像するだけでも恐ろしい状態に陥ることになるのだ。 ESPはいわば諸刃の剣で、経験不足なドライバーをサポートしてくれる一方で、シチュエーションによってはOFFにしなければならないという判断力をドライバーに求める電子デバイスでもある。さらに4HのESPカットと、4LのブレーキLSDトラクションコントロールをどう使い分けるかというのも、やはり経験値を基にした判断によるところとなる。