仕組みで解決できることを、やさしさで解決しない。SmartHRが考える「well-working」のためのアクセシビリティとは?
改正障害者差別解消法が4月1日から施行され、事業者の合理的配慮の提供が義務化された。障害がある・ないにかかわらずすべての人にとって利用しやすいことは大切だ。
人事労務ソフトを提供するSmartHRは、従来からアクセシビリティに取り組んでいる。2023年末の障害者週間(12月3日から12月9日まで)に合わせて公開したスペシャルムービーは多くの共感を呼んだ。 同社ではどのような考え方でアクセシビリティに取り組んでいるのか、アクセシビリティ本部Directorの桝田草一氏とブランドコミュニケーション本部の中澤茉里氏に聞いた。
SmartHRにおけるアクセシビリティの取り組み
合理的配慮とは、「障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること」(内閣府)。雇用者から従業員への合理的配慮は「障害者雇用促進法」ですでに義務化されているが、社会生活全般を対象とする「障害者差別解消法」の改正で、サービス提供者から利用者への配慮も義務になった。
合理的配慮とは、たとえば段差にスロープを渡す、筆談用具を配備するなどのことだが、Webサービスであっても配慮が必要なことは変わりない。というより、自社のWebサイトがアクセシブルなら、それだけリーチできる人が増えるのだから、対応して損なことは何もない。 SmartHRは人事労務のクラウドサービスを提供しているが、そもそも人事労務の面倒な手続きを、誰でも簡単にできるようにするためのツールとして開発された。コーポレートミッションは「well-working:労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」で、「誰もが」を本気でやろうとしているのが、アクセシビリティ向上の取り組みだ。 SmartHRのようなバックオフィスのツールを含め、企業の業務用ツールは「使いにくいから別のソフトを使う」というわけにはいかない。アクセシビリティの問題で使えない社員がいると、その人向けに別のフローを用意しなければならない。すべての社員が使えないと、企業にとって余計なコストや手間がかかるということだ。 使えない社員がいるときは、総務の担当者が手伝ってあげればいいと思うかもしれない。しかし、毎回お願いするのは申し訳ないと思うのではないか。総務担当者はいつでも手が空いているわけではないし、席を外していたり、休憩をとっていたりすることもあるだろう。それを仕組みで解決するのが、「アクセシビリティの向上」だ。 ┌────────── 以前は、『やさしさ禁止』というスローガンを掲げていたこともあります。アクセシビリティを担保して働きやすい環境を作るのは、配慮というより人権の問題。だから、やさしさ頼みではない方法が必要です(桝田氏) └──────────