90歳の草笛光子が語る“グレーヘア”の楽しみ方「白い髪には口紅が映えるし、洋服選びも楽しくなりました」
白い髪には口紅が映えるし、洋服選びも楽しくなりました。
その舞台が終わったあと、NHKの『ためしてガッテン』に出演することになりました。森光子さん、八千草薫さんと交代で出るのですが、私の頭はまだベリーベリーショートで、しかも白髪。観てくださる方をびっくりさせてもいけないと思ったので、 「カツラをかぶりましょうか」 と相談してみたら、スタイリストさんが、 「ダメ。そのまま出てください」 「エッ、白髪の坊主頭で?」 「いいんです。おしゃれで素敵だから」 「あらそう、それならこのままで」 と、あっさり決めました。NHKには視聴者から、「草笛さんの白髪、どういう心境の変化ですか」とお手紙が来たらしいです。実は以前から、染めるのをいつやめようかしらと考えていたので、ちょっと踏ん切りをつけただけでした。 それを機に、黒く染めるのはやめました。六十九歳のときです。すると気持ちが解放されて、とっても楽になりました。もう、ウソも隠し事もない自分です。「素のままでいいんだわ」と気づいたら、「何でも来い!」って心境ですよ。 白い髪には口紅が映えるし、洋服選びも楽しくなりました。何色の服でも合うし、特に明るい色が似合うのです。黒と茶色の組み合わせが好きだった私が、鮮やかなブルーやピンクを着るようになりました。白い髪は女性を華やかに見せるし、気持ちまで晴れやかにします。
自然体が一番
以前は、白髪が目立つ年になると染める女性が多くて、「どうしてみなさん、染めちゃうのかしら」と残念に思っていたのですが、最近はグレーヘアの魅力が注目されるようになってきました。自然体が一番なんでしょうね。 というわけでずっと真っ白だった私の髪ですが、なぜかこの数年、黒い毛が生えてきました。私は何事もいいほうへ取る性格ですから、「黒いのが出てきちゃって、やあね」ではなく、「黒いのが出てきたら、上手に使えばいいんだわ」と考えています。 白いところに黒が混ざると、濃淡やグラデーションを出せます。ウェーブをつけたら、髪の毛が流れている筋を見せられます。真っ白なだけだと、ぼやけて毛筋は見えませんよね。綿菓子をかぶっているみたいですから。なので「あ、神様がくださったんだ」と思っているのです。 でも、なぜこの年になって、黒い髪が生えてきたのか。トーク番組でカメラに向かって、「どうして黒くなるのか、どなたか教えてください」とお尋ねしてみたのですが、回答はありませんでした。 確実なのは、髪を染める薬品を使わなくなったおかげで、頭皮が健康になったことでしょう。あとは、ずっと前からの習慣で、アミノ酸を飲んでいるせいかしら。髪の主成分は、アミノ酸だそうですからね。夏などは水分不足が怖いので、夜はお湯に粉末をひとさじ溶いて、枕元へ置いて寝ます。トイレで目が覚めたとき、少しずつ飲むようにしているのです。 白髪は、私を自由にしてくれました。だけどいい気なものでね、髪の毛だって自由になりたいんです。私に聞いてからにすればいいのに、知らん顔して生えてきますからね。でも面倒を見ていないから、白くなったり黒くなったりしても文句が言えません。「もう勝手にしなさい、頭の上で」って感じなのです。 若返っていると言われればそうなのかもしれませんけれど、上手くいかないものですね、自分の髪なのに。
草笛光子