“稀代のドリブラー”三笘薫の軌跡を辿る…来季は新生ブライトン&日本代表のエースへ
ケガを乗り越え、日本で“新生ブライトン”初陣へ
そんな圧巻パフォーマンスを見せつけても、本人は「まだまだ」「もっとやれる」と決して満足することはなかった。高い領域を渇望する姿勢は川崎ジュニア時代から全く変わらない。三笘薫という選手はまさに「向上心の塊」なのである。24歳での海外移籍は、一般的に見れば遅い部類だったが、一切、関係なかった。21-22シーズンにユニオンで27試合出場7ゴールという数字を残すと、森保一監督から満を持してA代表に招集される。初キャップは2022年11月のオマーン戦。後半からピッチに送り出されたが、卓越した局面打開力で試合の流れをガラリと変え、伊東純也の決勝弾をアシスト。日本を窮地から救う大仕事を果たしてみせたのだ。 さらに、翌2022年3月のオーストラリアとの最終決戦では、スコアレスの状況で終盤出てきた三笘が自ら2発を叩き出し、日本にカタールW杯切符をもたらした。この頃から森保監督も「戦術・三笘」という言葉を公の場で使い始めたが、まさに三笘が出てくるだけで試合の流れが一変するようになった。それだけ彼の個人能力が頭抜けていたということ。同年夏にレンタル元のブライトンに復帰してからは、瞬く間に左ウイングの定位置を奪取。プレミアで見る者を釘付けにし、11月5日のウルヴァーハンプトン戦でプレミア初ゴールをゲット。カタールW杯に弾みをつけた。 そして、長年、夢に描き続けていた初めてのW杯の大舞台で、彼はジョーカーとして全4試合に出場。スペイン戦では田中碧の逆転弾につながる奇跡的な折り返しを披露。これが「三笘の1ミリ」と命名されるなど、献身的かつアグレッシブなパフォーマンスが高く評価された。それでも、クロアチア戦でのPK失敗後には人目をはばからずに号泣。「チームを勝たせる存在にならないといけない。4年間もう1回、そこを目指そうと思います」と毅然と発言。その挑戦は今もなお続いている。 冒頭の通り、23-24シーズンはケガに泣かされたが、今夏開幕する新シーズンは頭からフル稼働してもらう必要がある。ブライトンも三笘が加入したタイミングで指揮官となったロベルト・デ・ゼルビ監督が昨季限りで退任し、31歳のファビアン・ヒュルツェラー監督が就任。新体制で再出発することになる。三笘とわずか4歳違いの若き指揮官がどんなチーム作りを進めていくのか。そこは未知数の部分が大だが、まずは7月末の日本ツアーが大いに注目される。彼らは7月24日に鹿島アントラーズ、28日に東京ヴェルディと2試合を消化する予定で、三笘にとってもケガからの復帰シリーズとなる。ここで力強いドリブル突破を見せてくれれば、日本中のファンが安堵するはず。未来への希望を持てるようなパフォーマンスを強く期待したいところだ。 そのうえで、8月に24-25シーズンが開幕。9月からは2026年W杯最終予選も始まる。前回は途中参戦だった三笘にしてみれば、クラブと代表を毎月のように行き来しながら、エースとしての働きを見せるというのは、非常に高いハードルになる。それでも、カタールW杯で誓った通り、彼は日本を勝たせ、ブライトンでも勝たせる存在にならなければいけない。 「大学時代の彼は無双していたわけではありません。でも目指すべき場所に辿り着くべく、ブレることなく自分のやるべきことをやり続けたのは確かです。今の環境で何をすべきかを考え、取り組んでいく『自己解決能力』は本当に際立っていた。そこが最大の強みだと思います」。恩師・小井戸監督も太鼓判を押すように、彼には傑出した賢さと解決力を駆使して、困難をくぐり抜けることが肝要だ。 ここから先は、よりパワーアップした三笘薫の一挙手一投足が見られるはず――。多くの人々が熱望するような理想的な軌跡を彼には着実に歩み続けてほしいものである。 取材・文=元川悦子 ブライトン&ホーヴ・アルビオン・ジャパンツアー2024 対戦カード:鹿島アントラーズ vs ブライトン 試合会場:国立競技場 開催日時:2024年7月24日(水)19時試合開始 放送予定:Amazonプライム・ビデオ 対戦カード:東京ヴェルディ vs ブライトン 試合会場:国立競技場 開催日時:2024年7月28日(日)18時30分試合開始 放送予定:Amazonプライム・ビデオ 大会公式ページはこちら
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