【イベントレポート】入江悠「あんのこと」は特別な1作、河合優実との映画作りを振り返る
第37回東京国際映画祭の記者会見が10月15日に東京・日本外国特派員協会で開催。Nippon Cinema Now部門で特集される映画監督の入江悠が出席した。 【画像】第37回東京国際映画祭で上映される「あんのこと」場面写真 ここ1年の日本映画を対象に、海外に紹介されるべき日本映画という観点から選考された作品を上映するNippon Cinema Now。例年、監督の特集も行われ、今年は「あんのこと」が話題を呼んだ入江が選ばれた。映画祭のプログラミングディレクターである市山尚三は、入江を「大きな商業作品やインディペンデント作品の両方を行き来しながら撮っている監督」と紹介し、「『あんのこと』が素晴らしく、今回監督の足跡を振り返る企画として特集することを決めた。ぜひ入江監督の作品をこの映画祭で改めて発掘してほしい」と語る。 続けて入江は「日本には素晴らしい監督がたくさんいらっしゃって、作家性のある方が同世代にもたくさんいる中で、なんで自分が選ばれたのだろうと困惑したのが正直なところ」と吐露。「ただ、人生で何度もあることではないし、『あんのこと』が自分のフィルモグラフィの中で特別な1作になるだろうと感じていたので、そのタイミングで呼んでいただけて、うれしく思っています。この特集をしていただくことで、今後、自分がどのように映画と向き合っていくかを改めて考えるきっかけにできれば」と述べた。 ある1人の少女の壮絶な人生をつづった新聞記事に着想を得て制作された「あんのこと」。入江は主演の河合優実を19歳の頃から知っていたそうで「その頃から演技に対する意気込みがすごかったんです。プロデューサーから彼女を薦められたのですが、彼女と一緒にモデルになった主人公の輪郭を求めて、依存症の方に話を聞きに行くなど、一緒に作品を作った」と振り返る。さらに「モデルになった方を同情の対象にしたくない、撮影中に彼女と手をつないでいるような気がするとおっしゃっていて、彼女の人生を追体験していたと思います。河合さんを通して僕たちは彼女の気持ちを知ることができたのではないかなと考えています」とも回想した。 また「観客に感じてほしいこと」を聞かれた入江は「自分が彼女に近付きたかったので、観客にどう感じてほしいという意識はあまりありませんでした。社会の閉塞感が漂ってきて、圧迫されるのが怖くて、かなり撮影当時は苦しかったというのが率直な気持ち」と打ち明ける。そして「東日本大震災、コロナ禍と大体10年ごとに社会が息苦しくなるようなことが起こっていると思います。これからも同じようなことは起こると思うし、また10年後にそんなことが起こったとき、10年後のあんみたいな人が1人でも少なくなってくれたらいいなと完成時には思いました」と言葉を紡いだ。 第37回東京国際映画祭は10月28日から11月6日にかけて開催。「あんのこと」は10月31日に東京・丸の内ピカデリーで上映される。チケットは10月19日より部門別に順次販売。Nippon Cinema Nowは同日13時に発売となる。 ■ 第37回東京国際映画祭 2024年10月28日(月)~11月6日(水)東京都 日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区 □ Nippon Cinema Now 監督特集:入江悠 ・SR サイタマノラッパー ・SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム ・SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者 ・太陽 ・あんのこと (c)2024 TIFF