ベルリンの壁崩壊から35年の秋、世界が目にしたトランプ氏の米大統領再選
英国EU離脱の「壁」
「ベルリンの壁」が姿を消した世界には、また新たな壁が生まれ始めた。「ベルリンの壁」崩壊の4年後に誕生したEU(ヨーロッパ連合)。ユーロという統一通貨も作られて、まさに「ヨーロッパはひとつ」と歩み出した。しかし、経済や移民問題などから、盟主である英国が、国民投票の末、EUを離脱した。ここにまた「壁」が姿を見せた。
中東で築かれた「壁」
中東に目を向けると、和平が実現するかと思われた、イスラエルとパレスチナの対立だったが、それも破綻し、イスラエル国内にあるパレスチナ自治区・ガザには、地区の周囲の「壁」が築かれた。その「壁」を越えた大規模なテロ事件が起きたのは2023年(令和5年)秋だった。紛争は今も続き、さらに周辺諸国を巻き込みながら泥沼化している。
自国第一主義の「壁」
「壁」を新たに作った人物が、2016年(平成28年)の米大統領選挙で当選したドナルド・トランプ氏だった。「アメリカ・ファースト」という自国第一主義の呼びかけによって、人々の心に「壁」ができていき、またメキシコからの不法移民を防ぐため、国境には実際に「壁」も築いた。「トランプの壁」と呼ばれ、人の往来を阻止するものとなった。その"前大統領"は、再びアメリカ国民によってリーダーとして選ばれて、"次期大統領"となった。「ベルリンの壁」崩壊から35年目の秋のことである。 かつて"東西の壁"が破れた時の高揚感は、いつのまにか姿を消していた。再び姿を見せている数々の「壁」、人間はどうして「壁」を捨てきれないのだろうか。人々の心の中にも、そして物理的にも「壁」を築いてきた米大統領の"再登板"によって、これから4年間の世界はどうなっていくのか、世界各国が固唾を呑んで見守る秋を迎えている。 【東西南北論説風(535) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
CBCテレビ