「骨の髄まで炎上しなさい」復讐劇だけにとどまらない?『ブラックリベンジ』
木村多江の美しさが、哀しみの中で引き立つ。喪服のような黒ずくめのファッションに赤く浮き上がるように載せられたルージュとエナメル。木村演じる今宮沙織は5年前、捏造されたスクープ記事によって最愛の夫とお腹いた子を失った。5日スタートした連続ドラマ「ブラックリベンジ」(読売テレビ・日本テレビ系)は、幸福の絶頂ですべてを失った沙織が自ら週刊誌の契約ライターとなり、夫を陥れた人々に復讐していく。元週刊文春記者で、テレビや夕刊フジの連載などでも活躍中のジャーナリスト、中村竜太郎氏が監修をしていることでも話題だ。
登場人物と気になるアイテムが印象に残るカメラワーク
登場人物の表情と、ひとつひとつの場面やアイテムが印象に残る。「週刊星流」編集部内では手持ちカメラが多用され、微妙な画面の揺れが躍動感を伝える。生活臭のしない自室ではピントの深度が驚くほど浅く、沙織の目にピントがきていれば鼻や口はもうボケている。そのせいで、哀しげな目がやたら印象に残る。夫との幸せな記念写真のフレームが置かれたそばには、皿の上に2人の結婚指輪と腕時計が一本。 沙織が外出時に左腕に巻いているその時計はスイス製のサントノーレアートコードダイビングで、口径42ミリもあるメンズでも大型のモデルだ。夫の形見か、それとも取材現場での視認性を重視した選択か。ひとつのカット、ひとつのアイテムがさまざまな想像力を喚起する。監修を中村氏のようなその道のプロにオファーしたことからもわかるが、それだけ作り込みがいい証だ。
決め台詞「骨の髄まで炎上しなさい」 単なる復讐劇には終わりそうには思えない
クール、無表情な沙織だが、罠にハメたターゲット同士が目の前で激しく罵り合えば肩を震わせながらけたたましく笑い、夫の仇に対しては鬼のような怒りの表情で「骨の髄まで炎上しなさい」と吐き捨てる。もはや復讐の内にしか生きることができないのか。そういえば昭和の少年漫画に、黒魔術を操る美少女・黒井ミサの復讐劇を描いた「エコエコアザラク」という作品がある。もちろん物語も設定もまったく異なるので比較の対象にはならないが、「骨の髄まで炎上しなさい」の決め台詞を吐き出す沙織の鬼気迫る芝居を観ていて、思わず”大人版黒井ミサ”のイメージを重ねてしまった。怨念は、普通の人を魔女にも鬼にも変える。 1話の終盤では、正義感あふれる編集部デスクの天満(平山浩行)が情報屋の城田(DAIGO=特別出演)に沙織の素性を調べるよう依頼する場面がある。天満は後に沙織から5年前の記事の真相を打ち明けられ、ある選択を迫られることになるという。また、沙織のカウンセラーとして精神のケアを行っている糸賀朱里(鈴木砂羽)も、沙織のよき理解者を装いながら、実際には復讐を煽っている謎の人物。黒い人間模様が複雑に絡み合い、単なる復讐劇にとどまらない、かなりスリリングな展開がこの先待っていそうだ。 次も観たい度 ★★★☆☆ (文・志和浩司)