元亜細亜大、東芝投手監督率いる三島!「熱男イズム」で夏の愛媛初戦制す!
<第106回全国高校野球選手権愛媛大会:三島 7-0 南宇和(7回コールド)>◇17日◇1回戦◇坊っちゃんスタジアム 【トーナメント表】愛媛大会 17日までの結果 「昨年の夏も経験した選手も多いんですが、みんな緊張していましたね。三島監督就任後初の坊っちゃんスタジアムの球場感覚も難しかった。采配をしていても怖かった。東芝の印出(順彦)監督や工藤(賢二)監督の野球では……ないような気がします……」。試合後、こう言って苦笑いを浮かべたのは三島の佐藤 将太郎監督である。 そんな佐藤監督の球歴は異色だ。延岡(宮崎)と亜細亜大3年までは投手。その後はマネージャーに転じ4年時には明治神宮大会優勝。8年間所属した社会人・東芝(川崎市)では2007、2010年の都市対抗優勝を陰で支える活躍をみせた。ちなみの冒頭のコメントにあった2監督は、東芝所属時代の指揮官である。 東芝野球部勇退後は東芝のキャンプ地である愛媛県で一念発起して教員の道へ。2021年からは初の高校野球監督として指揮を執る三島でこの夏、東芝時代以来10年ぶりの坊っちゃんスタジアム帰還を果たすことになったのである。 ただ、三島の夏初戦は必ずしも順風満帆とはいかなかった。結果こそ1978年春、1980年夏の甲子園出場経験を持つ南宇和に対し7回裏でのコールド勝ちながら、中盤までは大阪府警勤務などを経て愛媛県で講師となり、67歳にして初の高校野球采配となった水永 義尚監督が率いる相手のコンパクトなスイングにピンチの連続。打線も南宇和の1年生右腕・松本 龍弥投手が投げ下ろすキレのあるストレートを打ちあぐんだ。 ただ、選手主体の指導を軸としながら「目の前に起こっている事象をほったらかしにできない」と苦戦を招く種を探索し、そこを打破するアシストへの準備を怠らない指揮官は、スタメンのセレクトから打破策を整えていた。それは「全力疾走、全力発声を常に監督から言われているし、いつも腹から声を出すようにしている」元気印3年生・髙橋 拓巳の「8番左翼手」抜擢である。 はたして髙橋は「使ってよかった」と指揮官も讃える完璧な仕事を果たす。3打席中2度の出塁でいずれもホームに生還したばかりでなく、「去年とは全く違って緊張していた」4番の伊藤 廉人内野手(2年)をはじめスタメン9人中2年生6人、1年生1人が占める下級生たちに対しても声かけで意気消沈した雰囲気を払拭する。 かくして「練習内容を見ても1個先が見えているし、少しのミスでもどこに原因があるか指摘してくれる」と俊足リードオフマンの堤 大和内野手(2年)も感心する佐藤監督の眼力は、チームの平常心を引き出すことに。 4点リード後の5回表二死満塁の大ピンチで「小中高で同じチームなのでアイコンタクトです」と二遊間の伊藤と堤が目くばせしたことによる、けん制プレーでの二塁タッチアウトは、まさに選手たちがデザインする三島野球の真骨頂であった。 ちなみに、この「全力疾走・全力発声」の源流は……。東芝の大河原 正人監督と共に亜細亜大の1年先輩だった福岡ソフトバンクホークス、読売ジャイアンツで活躍した「熱男」こと松田 宣浩氏。「腹から声出すしかない。投手も投げながら叫んでました(笑)」と佐藤監督は当時課されたノルマを懐かしむが、その後数多く訪れた修羅場で実感した「最後は声」の熱男イズムを、注入したことが勝敗を分けたといっても過言ではない。 三島の次戦・2回戦は開会式で見事な選手宣誓をやり遂げた合田 陸(3年)が主将・エースの新居浜工。2020年の独自大会以来、選手権愛媛大会に限れば2011年以来の複数勝利で今春県大会で8強に進んだ自信を確固たるものとし、昨年、川之江の甲子園出場で沸いた四国中央市に新たな歴史を刻むためにも、三島は「熱男イズム」を全員で出し切る覚悟だ。