「わざと『認知症の母さん』を徘徊させているのか?」妻の「本性」に苦しむ夫。嫁姑問題の「令和的」着地点とは
内閣府が発表した「令和6年版高齢社会白書」によると、我が国の総人口は、令和5年 10 月1日現在、1億 2,435 万人。65 歳以上の人口は、3,623 万人で総人口に占める 割合は 29.1%。また、令和 52(2070)年には、2.6 人に1人が 65 歳以上、約4人に1人が 75 歳以上と推測している。 この記事の他の画像を見る 危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は高齢化社会についてこう語る。 「この内閣府の『令和6年版高齢社会白書』では、認知症に関する調査も発表されています。令和4年における認知 症の高齢者数は443.2万人ですが、令和 22 年 には、584.2万人になると推計されています。 高齢化社会につきものの「認知症」患者の数も、驚異的な数で増えていくことがわかっています。また、親族だけによる在宅介護は絶対におすすめしません。行政・福祉の協力を得て、主に介助・介護をする家族が孤立しないよう見守る必要があることをお忘れなきよう」 今回お話を聞かせてくれたのは50代の会社員・木村文人さん(仮名)。80代半ばとなった実母の認知症が徐々に進行し不安な日々を送ってきたが、現在母は施設に入っているという。 「うちの母はまだ自分でできることも結構ある方なんです。暴言を吐いたり暴れたりしません。ただ、やたらトイレに行ったり風呂を頑なに嫌がったり、勝手に散歩に行ったりして戸惑いましたね。週2でデイサービスも利用してきましたけど、やはり自宅でみるのは限界でした...」 しかし、文人さんの悩みの対象は老母のことだけに留まらなかった。 「母の認知症を通じて妻の本性のようなものを初めて知りました。それがかなり強烈だったんです。妻は、母をよく面倒見てくれるなあと感心していたのですが、事実は逆だったようで...」 雪彦さんは「妻の本性」を知る少し前に、大学4年の娘からとある相談を受けていた。まさかそれが娘から送られた信号だとは思いもしなかったそうだ。 相談内容は、認知症が進みつつある老母がしばしば行う”自由な散歩”についてだった。世間ではその自由な散歩を「徘徊」と呼ぶ。 「お母さんはおばあちゃんを敢えて1人で徘徊させているんじゃないか、と娘は言うんです。まさかそんなことあるわけないだろうと私もつい怒ってしまったんですが、実はちょっと変だと思うことが私の中にもあり、そこから疑心暗鬼になりました」 ある日、帰宅した娘は、妻が何か言葉をかけながら、外の暗がりへ母を送り出すところを見たという。その時は娘が外から回って祖母を何とか連れ戻したという話だ。 「妻は以前から『外出には必ず同行するようにしているが、知らない間に勝手に出て行ってしまうこともあって大変なの』と言っていました。私はそれを信じていました」 母の部屋のドア・玄関・お勝手口にはベルをつけてあるのだが、「聞こえないこともある」というのが妻の説明。 「娘が含みのある言い方をしたのが気になりましたが、まさか妻が危険を承知で、敢えて母を1人で外に出すなんて、その時はやはり信じられませんでした」 妻と姑の仲はどうなのだろう。 「私の母に対して腹に一物あるなんて聞いたこともないですし、認知症の症状が出るようになってからは同居も大変でしたが、文句を言わずに頑張ってくれてました。昔から母とは仲良くしてましたよ」 娘の話を聞いた文人さんの脳裏には、少し前に「お袋の部屋に外から鍵を取り付けるか」と相談した時、妻から強く反対されたことが思い出された。その提案をしたのは2か月ほど前、母が初めて近所の商店街で迷子になった時のことだ。 「誰かしら知っている人が見つかるような下町の商店街なので、困っていた母を町内の方が家まで送り届けてくれました。でも、母はついに帰宅ルートがわからなくなったわけで、これはまずいと思い、やはり部屋に外から鍵をつけるべきだと妻に提案しました」 文人さんの提案に対し、私が同行するから鍵だけはやめてくれという妻。 「妻はごもっともなことを言うんです。自転車を取り上げられて、ついには自分の部屋から自由に出られなくなるなんて、お義母さんがかわいそうじゃないの、と」 文人さんは妻の言い分を正論だと思ったが、万が一行方不明になったり事故に遭ったりしたら、他人様を巻き込んで大事になってしまう。 また、今はまだ夜中の徘徊はないが、今後昼夜逆転する恐れもある。そのリスクと引き換えにしてでも、認知症の母に常の自由を与えるべきなのかどうか悩んだ。 「妻は、私がよく見ているようにするから鍵だけはやめてと言いました。それで鍵のことはうやむやになったんです」 しかし、改めて思い返すと、本当に妻が母をよく監視していたのか、外出に同行していたのかどうかは確認していない。母に尋ねるとにこにこしながら頷くだけで、真相は藪の中だった。 だが、問題をうやむやにしておいてはいけないと文人さんに思わせる、決定的な出来事が起きた。 さらなるトラブルについては、後編にて詳報する。 取材・文/大分恵み
【関連記事】
- 【後編はこちら】認知症の義母の徘徊を喜んで促す妻。「お義母さん、お帰りは待ってませんから!」妻のその本性とは
- 「やめて...未婚の私をATM扱いしないでっ!」独身の姉にたかる「妹弟」たち。「子だくさんが正義」だと錯覚させる令和の少子化問題
- 「 ワンチャンあるかな…」先生から娘へのLINEに唖然。今、日本で増えている「 教職員の性加害 」が抱える由々しき事態
- 「流産したの知ってるくせに」子どもの写真送りつけてくる友と絶縁。40代主婦が語る理解されない死産のリアル。「どうせ生まれても」に続く義母からの戦慄のLINE
- 「子供の写真入り年賀状って、幸せのお裾分けじゃないの?」30代主婦に「LINE」で苦情を送った元同僚の悲痛な声とは?