ウクライナ・ガザ・中国…「トランプ2.0」は混乱した世界に何をもたらすのか
トランプ前大統領は大統領選挙の期間中に、ウクライナとロシアの戦争を24時間以内に終わらせることができると発言した。また自身が選挙に負ければイスラエルは「消滅する」と警告。さらに中国からの輸入品に新たな関税をかけると約束した。混乱した世界において、トランプ氏の米大統領選勝利は何を意味するのか? <ウクライナ戦争> トランプ氏のウクライナ戦争への対応が、新政権の方針の基調を示す可能性がある。バイデン大統領は、ウクライナに数百億ドルの軍事・財政支援を行った。トランプ氏は、バイデン政権のウクライナへの支援規模を批判し、1月の大統領就任前に紛争を終わらせると宣言した。だが具体的な方法について言及はなかった。 政治アナリストのウォロディミル・フェセンコさんは、トランプ氏は終戦に向けた拙速な交渉を推し進める可能性が高いと話す。トランプ氏は早く結果を出すことを求めているため、ある程度の譲歩は余儀なくされるだろうと指摘する。 ウクライナを支援する北大西洋条約機構(NATO)もまた揺れている。トランプ氏は、資金負担を怠る国々の防衛を拒否するだけでなく、ロシアに対してそれらの国々を「好きなようにするよう」けしかけると警告していた。 <イスラエルには制約なし?> トランプ氏はまた、より広範な地域紛争に発展する恐れのある中東情勢にも直面することとなる。イスラエルはイランと対峙しながら、ガザとレバノンで戦争を続けている。トランプ氏はイスラエルへの武器供給を継続すると予想される。同氏の対イスラエル政策には、人道的配慮による制約はおそらくないだろう。 「ネタニヤフ首相はハリス氏ではなく、トランプ氏がホワイトハウスに向かうことを喜んでいるはずだ」――英王立国際問題研究所のブロンウェン・マドックス所長はそう指摘した。「トランプ氏はこの状況を改善するかもしれないし、悪化させるかもしれない」 <中国に対して矛盾したメッセージ> トランプ氏は対中強硬姿勢を取ることを約束しており、中国製品への関税を引き上げる意向だ。「トランプ氏の60%関税は、おそらく現実のものになるだろう。」アジアグループの中国担当ディレクター、ハン・シェン・リンさんはこう述べた。 「中国の輸出に関して言えば、圧倒的に最大の市場は米国と欧州だ。中国は必ずしもその貿易圏で、二正面作戦を戦いたいとは思っていない」 一方、トランプ氏は矛盾したメッセージを示している。 トランプ氏は、中国の習近平国家主席が「鉄拳」で統治していることを「素晴らしい」と評価した。また中国が領有権を主張する台湾に対し、米国に防衛費を支払うべきだと述べた。 国家安全保障チームにどのような顔ぶれをそろえるかも未知数だ。専門家の多くは、1期目で「セーフガード」として機能していた共和党主流派の議員を、今期は引き入れようとはしないだろうとみている。