放っておくと命の危険も…! 夫こそ知っておくべき「産後うつ」の原因と対策
妊婦健診ではなかなか聞きたくても聞けない妊娠~出産~産後の不安&疑問をどこよりも丁寧に解説した妊娠・出産ガイド『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』。 【妊娠・出産のお金のリアル】“かかる費用”や“もらえる助成金”を現役産婦人科医が解説! その中から「パパにこそ知ってほしい! 産後うつ」についてご紹介します。
およそ1割の女性が陥る可能性のある「産後うつ」
妊婦さんのパートナーとして、特にお父さんにお願いしたいことがあります。お母さんの産後うつに注意してください。産後、およそ1割の女性がこの病気に陥るというデータもあり、どのご家族にとっても決して無関係な病気ではありません。症状は一般的なうつ病と同じく、不眠や食欲減少、集中力や決断力の低下、重くなると自殺念慮や自殺企図にもつながることがあります。実は、日本において妊産婦死亡の原因として最も多いのが、自殺です。 この傾向は2020年以降特に顕著で、コロナ禍によるストレスや交友関係の制限なども強く関与していると思われます。医療技術が発達して分娩関連の死亡事故を減らせたとしても、産後うつにより自ら命を絶ってしまう事例が増えてしまっている現状は、産婦人科医として悔しく思います。産後うつについては早期発見・治療について試みられているのですが、思うような成果があげられていません。大きな理由のひとつが、産後うつの発生頻度が高い時期にあります。 産後うつは多くの女性が出産直後に陥るマタニティブルーとは異なり、産後1~3カ月に多く発生すると言われています。これはつまり、産後1カ月健診を終えて、「これで産科は卒業です」と言われた後になるのです。産後うつの兆候を一番察知できるのは、産婦人科医ではなくパートナーであるあなたなのです。産後うつという名前から、一時的な気分不快と軽く捉えてしまう方もいらっしゃるかもしせんが、産後うつは立派な病気で、抗うつ薬などの専門的な治療が必要になります。
産後の妻の異常を察知した時、夫がやるべき事
もしもパートナーの様子がおかしいと思ったら、専門機関を受診するように提案してください。いきなり病院を受診するのが気後れするという方は、分娩した産科施設や産後ケア施設を訪ねてもいいし、地域自治体の母子支援に関わる部署の門を叩いていただいても構いません。そこにいる人たちが、包括的なケアが必要だと判断すれば、適切な治療へとつなぐ道を示してくれます。ひとり、もしくはふたりだけで解決しようとしないことが重要なのです。 うつの兆候を知る指標として、エジンバラ産後うつ病自己質問票(EPDS)という評価方法があります。パートナーさんも目を通しておき、特に産後数カ月は、EPDS の高リスクに当てはまる項目が多いのかどうかを、気にかけてください。