【補正予算衆院通過】熟議と公開なし得たか(12月13日)
国の2024(令和6)年度一般会計補正予算案は、12日の衆院本会議で可決され、参院を経て成立する見通しとなった。焦点の少数与党による予算審議は、野党の修正要求を受け入れる柔軟性を示し、政府案を数の力で押し通した歴代政権からの変化の兆しを感じさせた。ただ、一部与野党間の予算成立を巡る水面下の駆け引きには依然、疑問が残る。新生国会が「熟議と公開」に転換できるかどうか、引き続き注視していく必要がある。 政府予算案に対して立憲民主党は、2024年度予算の予備費から1千億円を能登半島地震の復興に充てる修正案を提出した。石破茂首相は12日の衆院予算委員会で増額に理解を示した。 発生から間もなく1年を迎える中、被災地は道路の復旧や被災者の生活再建など、多くの課題を抱えたままだ。立憲民主党の修正案提出議員が予算委で窮状を訴え、補正予算案に反映されたのは、被災地の実情を踏まえれば当然だ。それでも、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の未曽有の災禍を経験し、復興の多難さと向き合う立場として、与野党の修正合意は高く評価したい。
争点は、政治資金規正法再改正に移る。政策活動費について、自民党は廃止をうたう一方、「公開方法工夫支出」を別途創設し、外交や企業の秘密に関わる使途は非公開にする手法を温存しようとしている。全面廃止を掲げる野党側は「新たな抜け道になる」と異を唱える。 企業・団体献金の是非は「政治とカネ」問題の本質にも通じる。自民党は、企業による政治献金の自由が1970(昭和45)年の最高裁判決で認められたのを引き合いに、正当性を主張する。相当過去の判例を持ち出す姿勢に対し、現下の政治不信を招いた反省と危機意識に欠ける、といった野党側の指摘にも理はあるのではないか。立憲民主党は企業・団体献金の禁止を打ち出しながら、政治団体は除くとしているが、与党のみならず野党間の支持も十分得られていない。 内外の有事を見れば、いたずらに越年させる猶予はないはずだ。予算審議を例に、修正すべきは相互に修正し、国民の納得のいく結論を導き出すべきだ。(五十嵐稔)