友なし、彼氏なし。介護で孤独なアラサーの彼女が見た、玄関前に立つ奇妙な来客とは?
懐かしい再会
「柚月、立派になったなあ。きちんと勤めに出て、本当に偉いぞ」 頑として譲らない先生は、亡くなった祖父が凝って造った玄関先に座って、お茶を美味しそうにすすった。30歳にもなると、人から手放しでほめられることも少なくなる。私はくすぐったいような気持ちで、先生の横に並んで座った。 「あのとき、先生が助けてくださったから……。先生がいなかったら、私きっと今のようではなかったと思います。中学生の、あの事故のあと」
小説/佐野倫子 イラスト/Semo 編集/山本理沙
佐野 倫子