“独特スイングでうまい人”ってどういう原理? “クセスゴ”でも上達するなら直さなくていい?
うまくなるのに見た目は関係ないのか?
独特のフォームなのに飛ぶ、打球が曲がらない……。お世辞にもきれいとはいえないスイングなのにボールを真っすぐ飛ばしているベテランゴルファーを練習場で見かけることがあります。 【動画】これがキレイなスイングに導く南澤プロの「横→縦→縦→横→縦→横」理論です
ほかの人のスイングを気にするほど余裕はないとはいえ、前の打席でそういうタイプのゴルファーが練習しているといろいろな疑問が湧いてきます。 「うまくなるのに見た目は関係ないのかな?」「自分のスイングもクセを直す必要はないのかも」……。 スクールやレッスンに通いつつ悩みながらスイングづくりに励んでいる人ならなおさら。独特のスイングでなぜうまく打てるのか不思議に感じますよね。 そうした疑問に答えてくれたのは、これまでスクールから数多くのクラブチャンピオンを輩出。横浜・湘南エリアで最もレッスンの予約が困難なプロとして知られる南澤聡さんです。 「独特のフォームなのにうまいゴルファーには、大きく分けて2つのタイプがあります。1つは経験値の高い人。豊富な練習量によってインパクトを点でとらえることができているからうまく打てる。ただ、そのインパクトを支えているのはあくまでも豊富な練習です。練習量が減るとどうしても肝心の点がズレてインパクトが狂い、当たらなくなってしまうでしょう」 「もう1つはいわゆる“練習場シングル”さん。真っ平らなところでインパクトの感覚をつかんでいるからマットの上ではしっかり打てます。ところがコースに出るとまったくダメな人も少なくない。本物のフェアウェイでは、毎ショット多かれ少なかれアンジュレーションがあるからです。練習場と同じ感覚で打っているつもりでも、実際はインパクトゾーンがどうしても短くなるためボールをつかまえられないのです」
90を切れば満足するか、シングルか、クラチャンか…
個性的なスイングでボールをうまく打てるのは、スイングで大事な“キモ”をつかんでいるからこそ。ただそれは条件付きで成り立っているようなところがあります。うまくいっているときはよくても条件が揃わなければキモをつかんだ打ち方を維持することは難しい、と南澤さんはいいます。 「唐突な例えになりますが、負の数の計算で、プラスとマイナスを掛けるとマイナスになりますよね。イメージはそれに近いです。いいところと悪いところが混在したスイングでは、結局のところいい結果につながらない」 「インパクトでボールを器用に点でとらえているタイプの人は、いいときはそれがプラスでも条件が変わるとマイナスになってしまい、ボールに当たらなくなる。調子の良し悪しがスコアにはっきり表れるのです。それに気づいて悩んでいる人には、ゴルフを教えるプロとして基本的に直すことをオススメします」 「私の生徒さんに80台で回る上手な人がいました。あるとき『クラブチャンピオンの座を本気で狙いたい。そのためならスイングをイチからでも直します』といわれたので、グリップから変えていったんです。当初しばらくはまったくスコアにならず、120くらい打っていましたね。でも根気よくレッスンを続けていくうちにクセが抜けて球筋も変わり、目標としたクラチャンをとりました」 自分のスイングが人と違うのは自然なこと。クセがあっても、スコアのアップダウンがあっても、楽しくプレーできているなら何よりです。でも、さらなる上達を目指してスイング深く掘り下げ、あらためて正しい動きを身につけていく過程もゴルフの大きな楽しみといえそうです。 「90を切れば満足するか。シングルになるか。クラチャンをとるか。目指すものによって個性的なスイングを直すかどうか、直すならスイングのどこをどう良くするかが変わってきます」 「生徒さんを見ていて感じるのは、本気で上を目指す人は、パターを除いた13本のクラブを1本ずつ見直して練習していることです。特にショットについてはインパクトゾーンを長くとるための練習をよくしています。道具では、シャフトやヘッドなどクラブに関する工夫や情報収集に対して非常にマメです。そうした過程を楽しみながら小さな目標を一つずつクリアしていく喜びがモチベーションにつながっているのだと思います」 個性的なスイングでもうまい人は、ものすごい練習量を維持してボールをうまくとらえている。さらに上を目指しクラチャンをとるような人は、遠回りをしてでもイチからスイングをつくり上げる。うまい人の共通点はスイングの見た目ではなく、努力や工夫を怠らないことなのでしょう。
野上雅子