冬の『Vket』にホロライブ・火威青が登場 企業の“解像度高め”な参入事例が相次ぐ『VRChat』
12月7日から、『VRChat』にて大規模イベント『バーチャルマーケット2024 Winter(『Vket2024冬)』がスタートした。毎年夏と冬に開催される定番イベントであり、様々な企業の出展コンテンツや、クリエイターやコミュニティによる展示が楽しめる。今回は音楽即売会イベント『MusicVket 6』も同時開催されており、2つのイベントをはしごすることも可能だ。 【画像】『VRChat』の『8番出口』を楽しむホロライブ・白上フブキ 筆者もまだ全会場を巡りきれていないが、富士山、お台場、ラスベガスをテーマにした企業出展会場は視察してきた。富士山モチーフの会場には、名前にちなんでか日本人向け集会場ワールドとして今年飛躍的に利用者数が伸びた「FUJIYAMA」の特設ブースが設けられるなど、一味違う色が垣間見えた。出展企業数は過去の開催回より抑えめにも感じたが、このくらいの展示数のほうが来場者の負担も少ないな、とも感じた。 舌を巻いたのは、ホロライブ所属のVTuber・火威青の出展ブースがあったことだ。お台場テーマ会場の最初に構えるブースでは、火威青のパネルとのツーショットを撮るコーナーが設けられている。直近の『VRChat』への猛プッシュを受けたと思われる、素早いアサインのように見えるが、その上で夏の開催から見られる「思い出を持ち帰る」方向性の展示へと昇華させたのは、長年開催され続けてきたVRイベントならではの手腕を感じるところだ。 ■「Vket」にとどまらない、企業の『VRChat』進出が相次ぐ 『バーチャルマーケット2024 Winter』の企業出展は同イベントの花形コンテンツのひとつであるが、直近ではさらなる派生展開も垣間見える。 まず、出展企業のひとつであるヤマハ発動機は、12月3日に常設ワールド「VR TRAIL」を『VRChat』上に公開した。静岡県周智(しゅうち)郡森町のミリオンペタルバイクパークを再現したコースを、同社のeBike(スポーツ電動アシスト自転車)に乗って走ることができる体験コンテンツだ。 写真映えする自然豊かなロケーションと、ゲーム感覚で楽しむことができる自社製品のバーチャル走行体験の組み合わせは、『VRChat』ユーザーにもうまい具合にヒットしそうな施策である。公開から5日ほどで3万人弱の人が訪れているのを見るに、ソーシャルVRを活用したPR施策として、好調なスタートを切れている印象だ。 同じく『バーチャルマーケット2024 Winter』出展企業のアサヒ飲料は、アセット販売という軸でユーザーにタッチを試みるようだ。同社の代表的な清涼飲料水であるカルピスを、様々な割り方で作ることができるギミックに、飲むだけでなく”飛ばす”こともできるウィルキンソンのギミックの2つを発売し、その展示を出展ブース側で行う形を採用している。『バーチャルマーケット』運営企業・HIKKYが有する「Vket Store」ではなく、『VRChat』関連ECのデファクトスタンダードとして名高い「BOOTH」にストアを構えているのもポイントだ。 遊び心あるこれらのアセットは、3回に渡る現役ユーザーとの企画会を通して作り出されたもののようだ。さらに、『VRChat』のグループも開設し、フォトコンテストも開催するなど、初出展らしからぬ力の入れようを感じるところだ。ブース出展で終わらない前のめりな姿勢は、メタバース事業参入における軸のブレなさにつながるはずなので、今後の展開に期待がかかる。 『Vket』の外でも、シューズブランドのダイアナが12月6日にメタバースファッションへ参入するという展開が見られた。同社を代表する商品のパンプスを3Dモデル化し、バッグ、ドレス、ハットが付属するトータルコーデのセットが、「BOOTH」およびアダストリアの特化ECサイト「StyMore」にて発売がスタートした。 ただ発売するだけでなく、事前にアンバサダーを起用したPRを展開し、12月17日にはアダストリアと共同で試着会の開催を発表するなど、『VRChat』ファッションカルチャーをよく理解した展開が目に留まる。現地をしっかりと理解した事業進出の流れが、着実に広まりつつあるようだ。 年の瀬のライブラッシュにあらたな『VRChat』参入VTuberも 年の瀬が近いということもあってか、各所でVTuberのライブイベントが相次いだ。ホロライブ・宝鐘マリンは2Daysでライブを、にじさんじからは「さんばか」(リゼ・ヘルエスタ、アンジュ・カトリーナ、戌亥とこ)、三枝明那、不破湊らが相次いでライブを開催し、活況を迎えている。 また、ホロライブ・白上フブキは『VRChat』で単独での配信を実施した。景観のよい温泉ワールドで雑談をする配信や、MyDearestが公開した『8番出口』公式ワールドへのチャレンジなど、立て続けに2回配信を実施している。火威青から始まった流れが、宝鐘マリンに続き届いた形であり、ここからどう派生するかも注目したいところだ。 ■ANYCOLORへの業務妨害で逮捕者が発生 そんな中、にじさんじ所属タレントとANYCOLORへの脅迫・業務妨害を行っていた人物が、同社への業務妨害容疑で逮捕されたとの報告があった。訴訟・示談はいくつか発生していたが、逮捕事例が明らかとなるのは初と思われる。声明を見るに、誤信に基づく犯行であったようで、なかなかに難しい事案であると推察される。 ANYCOLORとカバーはこれまで共同で誹謗中傷対策に取り組んできており、今回の一報は業界を代表する二社の努力が実を結んだとも言える。こうした事象に毅然と対応できるようになった点からは、業界の成熟を感じるところだ。
浅田カズラ