老若男女を笑わしたい! トム・ブラウンを変えた3つのターニングポイント
◇“下水道”の笑いをヤーレンズが変えてくれた ――結果として、今やトム・ブラウンさんを代表するパッケージともなりましたが、評価がついてきたなと思ったのはいつごろですか? 布川:2018年の2回戦の出番直前に、ウエストランドの井口くんが近づいてきて「びっくりしないでくださいよ。いつもトム・ブラウンさんが出てきたら、悲鳴が上がったり、イヤがられてたじゃないですか。でも、すごい歓迎っぽい空気になってると思うんです。でも、びっくりしないでくださいね」って言われて。 “なに言ってるんだろう?”って、半信半疑で出て行ったら、たしかにお客さんがちゃんと見てくれたんですよね。それで“あれ、なんかやりやすい”って。もしかしたら、井口くんが言ってくれてなかったら、戸惑ってたかもしれない(笑)。 みちお:同じ年の5月に『にちようチャップリン』に出させてもらったのも大きかったですね。さっき言ったみたいに、最初は悲鳴が上がっていたけど、徐々に僕らのことを知ってもらえて、受け入れてもらえたのかなって。 ――2016年に合体漫才が生まれ、2018年に歓迎ムードへと変わったタイミングが、お二人にとってはターニングポイントだったんですね。 布川:そうですね。あとは、2014年にヤーレンズがうちの事務所に入ってきたのもかなり大きかったです。それまで、うちの事務所の芸人たちの打ち上げって、誰かの服を破ちゃうとか、髪を切っちゃうとか、そういう笑いが主流だったんですよ。 みちお:下水道の笑いだよね。地下以下。排水の笑い。 布川:そういうお笑いばっかだったんですけど、ヤーレンズという正当に笑いをとれる人が入ってきたときに“あれ? なんか今までと違うぞ、こいつら”と思って。そしたら、実際にうちの事務所で初めて準々決勝まで行って。“どうやら、こういうふうにちゃんとやるのが正解らしい”と気づいて、ネタの作り方を根本から変えたんです。 みちお:稽古場とかで、お互いにネタを見せ合って、話し合ったりするようになって。たしかに、かなりターニングポイントだったな。 ――ヤーレンズのお二人からアドバイスされたことで覚えていることはありますか? 布川:それこそ、去年の敗者復活のネタ『ロンリー・チャップリン』のくだりも、「その曲、わかんない人が多いんじゃない?」って、作家さんとかから指摘をもらっていたんですけど、楢原と出井ちゃんは「いや、そのままでいいと思います。逆に、説明をそんなにしないほうがいいと思います」と言ってくれたんです。「てか、曲なんかどうでもいいですから。どうせ、そのあとで首の骨を折るんだから」って、うれしかったですね。 みちお:あと、僕のつかみのやり方が今の形になったのは出井ちゃんのおかげです。それまでは「誰か一緒に暗いとこ行こう!」みたいにお客さんをいじって、引かれることが多かったんですけど、「つかみ、自虐で自己完結できるやつを考えてみたら?」と言ってくれて。「ケンタッキーは骨ごと飲み込みます!」とか言い始めたら、お客さんからも笑ってもらえるようになりました。 ◇ハナコから引き継いだ『たろう7』 ――お二人が自分たちの強みだと思うことを教えてください。 みちお:人外だ! とか、妖怪だ! とか、誰を笑わせようとしてるんだ!って言われることはあるんですけど、自分たち的には、本気で老若男女を笑わせようと思ってネタを作ってるんです。それが強みだと思っています。 布川:若手たちが裏で「老若男女を笑わそうとしてるらしいよ…」ってニヤニヤされてたこともあるけどね(笑)。あとは、キモさじゃないですか? 売れてる人たちって、やっぱりキラキラしてますもん。僕らは全然してないです! ――お二人はキラキラしてますし、清潔感がありますよ。 布川:清潔感!?(笑) ホントですか? ありがとうございます。 ――今年は15年に1度の全国ツアー『たろう7』を開催しますね。ハナコさんの『たろう6』から名前を受け継いだとのことですが、なぜなのでしょう? 布川:やっぱりハナコのファンの人たちが、『たろう』がなくなって悲しんでいるんじゃないかと思ったので。『たろう』ファンは僕らが受け継ごうと。 みちお:じつは、これまでにやっていた『ソレソレライブ』も、ちょむ&マッキーっていうコンビから引き継いだんですよ。きっと何かを引き継ぐのが好きなんですよね。だから、布川からアイデアを聞いたときに「いいじゃん!」って即答しました。 布川:そうそう。それで、最初に電話しやすいから、まずハナコの菊田に電話したら「あ~……いや、それ、僕に聞かないでくださいよ。僕は全然いいですけど」って言われました。 ――(笑)。なぜ15年に1度なのでしょう? 布川:普段の単独ライブは大都市以外でやっているんですね。これからもそうしていくつもりなんですけど、「普通に東名阪だったり、福岡でも見たい」という声もあったので、15年に1回くらいはいいかなと。DREAMS COME TRUEが4年に1回『WONDERLAND』を、LDHの皆さんが7年に1回『PERFECT YEAR』をやっているのと同じような感覚です。 ――(笑)。ちなみに、6月29日(土)の昼公演のみ未就学児OKとのことですが、どのような意図があって? 布川:今回のM-1で、赤ちゃんが笑ってくれているということを知れたのは大きいですね。僕らの過激ぐあいが未就学児にOKになりつつあるならいいですし、僕らのネタを見ることによって、僕らの意志を継ぐ者たちが二代目トム・ブラウンを襲名してくれたらなと。 みちお:僕らも引き継ぎなんだ!? トム・ブラウンが世襲制だなんて、いま初めて聞きました。 ――(笑)。最後に、今後の目標を教えてください。 布川:先ほど清潔感とおっしゃっていただきましたが、僕はトリートメントのCMをやりたいです。1回、広告代理店の方に伝えたことはあるんですけど、「それは、新垣結衣さんとか、綾瀬はるかさんのクラスじゃないと……」って苦笑いされました。 みちお:僕はM-1で最高得点を出してみたいです。優勝できればもちろんうれしいですけど、「最高得点が出たー!」って聞いてみたい。100点が2人ぐらいいたら最高ですね。結果、それで優勝できなくてもいいです。 布川:なんで最終決戦で敗れてるんだよ! 最高得点を出して優勝だろ! (取材:於 ありさ)
NewsCrunch編集部