認知症で糖尿病の母と暮らすにしおかすみこが医師に聞いた「薬」の話
「母は認知症、姉はダウン症、父は酔っ払い、私は一発屋です」 12月2日放送の「あさイチ」や12月5日放送の「めざまし8」に生出演、自身の家族との暮らしや認知症・介護のことを語ったにしおかすみこさん。 【写真】にしおかすみこ、「お笑い芸人」時代 厚生労働省の「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、2022年度の認知症および軽度認知症の高齢者(65歳以上)は1000万人を超え、2040年には1200万人にせまる勢いだと予測されている。「「誰もが認知症になり得る」という認識のもと、認知症になっても生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、認知症バリアフリ-の推進、社会参加機会の確保等、認知症基本法に掲げる理念・施策 の推進に取り組んでいくことが重要」と書かれている。 2023年9月には日本のエーザイ社と米国のバイオジェン社が開発した新薬が、「アルツハイマー病による軽度認知障害、および軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で厚生労働省により薬事承認された。そんな話を聞いたにしおかさん、糖尿病治療のためのインスリン注射をもらいにいく母親につきそって、かかりつけ医のもとへ。 思わず「認知症を遅らせる薬があるって聞いたんですけど、こちらで処方してもらえますか?」と聞いてしまった。 果たしてその回答は。
先生は
すると先生はこんなことを言った。 「うーん。人によるし、難しいとこなんだけど。すみこさんのお母ちゃんには向かないと思うよ。認知症を直接治す薬ではないんだよ。なるべく穏やかに過ごしてもらうために処方するものだから。遅らせるっていうのもね。気分が荒れたり落ち込んだりすると、どんどん症状が進む可能性があるでしょ。それが薬で少しでも気持ちが落ち着くことができたら、自分らしくいられる可能性があるよね。結果、進行がゆっくりになるっていうのはあるよ。 それと、その薬があることで、見守るご家族も楽になったり、気持ちが安心するもあるよね。でもどういう薬かを知っているお母ちゃんは飲まないと思うよ。それを無理やり飲ます?1日何回なのか、『飲んで!』『イヤだ、飲まない!』を西岡親子は毎日繰り返すことにならないかな?それだったら、本当はね、お母ちゃんがいつも通り穏やかに暮らせる環境を整えたほうがいいんだけど、それもまた難しいんだよね。すみこさんのさ、芸人さん魂で毎日のひっちゃかめっちゃかを笑いに変えられない?か(笑)。判断は任せるけど、どう?」 端正な顔立ちと、気さくで飾らない物言いにギャップを感じる。私にでもわかる話し方。何となく母が信用、信頼するのがわかる気がした。 それと、私はこの日常を笑いには変えられない。そんなことできたら一発屋で終わってない。と、心で不貞腐れもした。 先生が母の血圧を測りながら、そのついでみたいな言い方で 「どう?薬飲んでみる?」と聞いた。 「いい、いいです」。母は目線を逸らしイヤイヤと首を振った。 「ほら、顔も見てくれない」と先生が柔らかく笑う。 ふと私はずっと、いや、いつからだろう?母と目が合っていないことに気づく。面と向かって喧嘩をしているときでさえだ。 「飲まない方向でやってみます」と、私は答えていた。 母が穏やかに過ごせる環境づくりなど無理だと思っているのにだ。どうしてだろう。