「調整」だけが得意な指導者はもういらない!石破茂新首相に求む、国民の夢育む“大風呂敷”
解散日程の議論は時期尚早
何よりも驚いたのは、次期首相・総裁が決まる前に、衆院の解散・総選挙の日程が取りざたされていたことだ。 岸田文雄首相が8月14日に退陣を表明した直後から「10月27日投票」説などがささやかれていたが、小泉進次郎氏が選挙中、「できるだけ早期に」との意向を示したことで、一気に現実味を帯びた。 対立候補の中には、新首相の所信表明、与野党の代表質問、衆参での予算委員会を短時間行い、そのうえでの解散をと主張する向きもあったが、いずれの主張も五十歩百歩だろう。 一日程度の予算委員会の論戦では国民に新首相の政見を提示するにはあまりに短い。臨時国会、通常国会での長丁場の論戦、予算編成などを通じて初めて国民に、その考えが伝わる。
過去の例も見ても、新首相は就任から半年~1年程度で解散・総選挙に踏み切るケースが少なくなかった。新首相への〝ご祝儀人気〟が続く間の選挙なら自らにも有利になる、という議員心理だろうが、早くも街頭演説など選挙運動を始めた議員も少なくなかった。
「宰相は廉潔で気宇壮大たれ」
ともあれ新しい首相・総裁は決まった。新首相がどんな構想を示すかについて、示唆に富んだ文章がある。時代錯誤という批判を承知であえて紹介するのは、時を超えて今日にも通じると思われるからだ。 戦争末期の1943年元旦の朝日新聞に掲載された「戦時宰相論」だ。 民政党出身の代議士、中野正剛の筆になる論文は、非常時における最高指導者のありようを論じている。自らへの批判と受け取った当時の首相、東条英機が激怒、中野に弾圧を加え、自刃に追い込んだ因縁の記事だ。 中野は、フランスの政治家、クレマンソー、日露戦争時の首相、桂太郎らに言及して、「宰相は国民の情熱と同化し、これを鼓舞することが必要」と論じ、そのうえで、「難局日本の名宰相は強からんためには、誠忠に謹慎に廉潔に、而(しこう)して気宇壮大(きうそうだい)でなければならぬ」と結んだ。 「誠忠」「気宇壮大」――。現在もまた非常時だ。自民党を国民に対して誠実な党に再生させ、〝大風呂敷〟といわれるくらい国民の心をつかみ鼓舞しなければならない。 石破次期首相に期待したいのはそれだ。
樫山幸夫