イスラエルの外交制約か 国際刑事裁判所がネタニヤフ首相らに逮捕状
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡り、国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)は21日、戦争犯罪に関与した疑いがあるとして、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相、ハマス軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏の計3人に逮捕状を出した。イスラエルはICC非加盟のため捜査への協力義務はないが、加盟する日本など120以上の国・地域をネタニヤフ氏らが訪問すれば逮捕される可能性があり、外交活動は大きく制約されかねない。 イスラエルと最大の支援国の米国は猛反発している。イスラエルの首相府は声明でICCの決定を「反ユダヤ主義的だ」と非難。その上で、ハマスが昨年10月にユダヤ人を虐殺したことに対して始めた戦争だとして正当性を主張した。米ホワイトハウスの報道官はICCの決定を「根本的に拒否する」とした。 一方、ハマスは「パレスチナ人に対する不正義の長い歴史をただすものだ」とネタニヤフ氏らへの逮捕状発行を歓迎し、「ガザ地区にいる無防備な市民に対する虐殺を直ちに停止するよう求める」と訴えた。 欧州連合(EU)のボレル外務・安全保障政策上級代表(外相)はICCの決定は「政治的なものではない」とし、「尊重され、実行されなければならない」と指摘した。 ICCの検察局は今年5月、逮捕状の請求を発表していた。ネタニヤフ氏らについて、パレスチナ自治区ガザ地区の市民の殺害や飢餓などを利用した戦争犯罪に対して「刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠がある」と指摘。ハマス側に対しては、イスラエルへの越境攻撃で民間人の殺害や性的暴行などをした疑いがあるとした。 ただ、デイフ氏に関しては、イスラエル軍が7月、ガザ地区南部ハンユニスの空爆で殺害したと主張している。ハマスは殺害を認めていない。ICCは、ハマスの最高指導者だったハニヤ氏とガザ地区トップだったシンワル氏の逮捕状も請求していたが、イスラエル軍に殺害されたため、請求を取り下げた。 ICCは昨年3月、ロシアが侵攻したウクライナから子どもをロシア領に不法に連れ去った疑いなどがあるとして、プーチン大統領にも逮捕状を出している。【エルサレム松岡大地】