福島原発事故から3年半 「吉田調書」が公開される意義とは?
政府が福島第一原発事故をめぐる「吉田調書」の公開に踏み切りました。これまで政府は「吉田氏が外部への公開を望んでいなかった」と調書を非公開としてきましたが、新聞各紙が「吉田調書」をめぐってスクープ合戦を繰り広げたことを受けて方針を転換。さる9月11日、菅元首相や枝野元官房長官、海江田元経産相など当時の政府関係者の証言とともに「吉田調書」を内閣官房のホームページで公開しました。事故から3年半経ったいま、なぜ「吉田調書」が注目されているのでしょうか。 【アーカイブ会見動画】朝日新聞が「吉田調書」報道で誤り認め謝罪
吉田所長に計27時間の聞き取り調査
この「吉田調書」とは、2011年3月に東京電力福島第一原発で発生した原発事故の現場や収束作業の様子について、政府の事故調査・検証委員会が当時所長だった故・吉田昌郎氏に聴取した証言記録の通称です。同年7月から始まった吉田氏に対する聞き取り調査は計13回、延べ約27時間に及び、調書には事故で全電源が喪失したときの絶望、東電本店への不信感、無意味な介入を続ける政府への怒りなど、吉田氏の心情が生々しく記されています。当初は政府や東京電力によって非公開の資料として扱われていました。 しかし、今年5月20日、朝日新聞が「吉田調書」を入手し、朝刊一面に「所長命令に違反 原発撤退」との大見出しを掲げて記事を掲載。朝日は「東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」と大々的に報じ、特設ウェブサイトでも「吉田調書」を特集しました。さらに8月、今度は産経新聞が「吉田調書」を入手、8月18日付朝刊で「吉田所長、『全面撤退』明確に否定 福島第一原発事故」と報じます。産経は事故発生後の吉田氏と菅元首相のやり取りなどを紹介し、東電が第一原発から「全面撤退」しようとしていたとする菅元首相らの主張を吉田氏が強く否定し、「所員らが自身の命令に反して撤退したとの認識は示していない」と、朝日の報道と真っ向から対立します。 原発事故をめぐる「待機命令違反」「撤退」があったのかどうかは大きな問題となり、海外にも波紋を広げました。そこで、政府が「吉田調書」を非公開とする方針を転換するに至ったわけです。結局、朝日新聞は9月11日に木村伊量(ただかず)社長が記者会見を開き、5月に報じた記事を取り消して、読者と東電関係者などに謝罪しています。