福島原発事故から3年半 「吉田調書」が公開される意義とは?
専門家による多角的な検証を
ただ、朝日新聞の“誤報”ばかりが注目されていますが、「吉田調書」が投げかけたのは「命令違反」「撤退」が事実かどうかだけではありません。一番のポイントは、今回の調書公開の意味です。実際、政府の事故調査・検証委員会の委員をつとめた作家・柳田邦男氏は、調書公開について「福島第一原発の事故は被害の規模の大きさや時間的な長さなど、いまも深刻な影響が残るという原発事故の特異性があるのに、事故から3年半がたったいまも原因が解明されたとはいえない。にもかかわらず、政府が率先して事故調査を継続して行う姿勢がみられない。例外的な公開によってさまざまな立場の専門家から多角的に事故が検証される意味は大きい」と話しています。 事故調査の聞き取りは772人の関係者に行われ、今回は吉田氏を含む19人分の証言記録が公開されました。こうした調書を多くの人が見られるようになり、そこからどれだけ新しい情報や客観的な事実を拾い上げられるか、そこが証言記録の公開の一番重要なポイントともされているのです。政府をはじめ、日本の社会全体は、証言から得られる数々の教訓からどのように学び、生かしていくのでしょうか。 (真屋キヨシ/清談社)