保育園留学(10月26日)
出生数が改善しなければ、日本は消滅する―。穏やかでない。かつてX(旧ツイッター)に投稿したのは、米国の起業家イーロン・マスク氏だ。わが国の少子化は、世界の関心事でもあるようだ▼鮫川村は、都市部の子育て世帯に田舎暮らしを体験してもらう「保育園留学」を進めている。未就学児と保護者を2週間、民泊で受け入れる。子どもを幼保施設で預かり、保護者は宿や図書館でテレワークに励む。8月に都内から第1号を迎え、来月以降も2組がやってくる▼貴重な公費を投じる背景には、深刻な少子化がある。20人前後だった年間の出生数は昨年度、8人に。初めて1桁台となった。転入もまれだ。村の子どもが他地域の同年代と交流し、多様性を育んでほしいとの思いから始めた。農産物の収穫体験や和紙すき、凍[し]み餅づくり…。都会にはない村の魅力をいかに知ってもらうか。担当者は知恵を絞る▼共に過ごす日々は短くても、心づくしのもてなしに「留学生」はほっこりする。ついのすみかを求める家族が現れ、「鮫川でいつまでも…」の投稿が相次ぐ村の近未来を描いてみる。何かと物議も醸す大事業家さんも、きっと「いいね」をくれるだろう。<2024・10・26>