両親は津川雅彦さん&朝丘雪路さん、真由子が映画で歌手役 歌唱シーンに感じた「やりがい」
映画『シンペイ 歌こそすべて』で大ヒット歌手・佐藤千夜子演じる
俳優で歌手の真由子(50)が映画『シンペイ 歌こそすべて』(1月10日公開、神山征二郎監督)に出演した。同作は、童謡から流行歌まで幅広いジャンルの2000曲以上を作曲した稀代の作曲家、中山晋平(中村橋之助)の人生をつづる音楽映画。真由子は、『東京行進曲』などの大ヒットを生んだ歌手の佐藤千夜子(1897~1968年)を演じた。(取材・文=平辻哲也) 【動画】津川雅彦・朝丘雪路の一人娘…真由子がロックに乗せ「深水流」基礎舞踊を披露 俳優、歌手として活動する真由子にとって、劇中で『東京行進曲』や『シャボン玉』の歌唱シーンもある佐藤千夜子は、「やりがいのある役柄だった」と語る。 佐藤千夜子は山形県天童市出身。東京音楽学校(現・東京芸術大学)在学中に作曲家の中山晋平や詩人の野口雨情と出会い、彼らと共に全国各地で新民謡や童謡の普及活動を行った。『波浮の港』(1928年)が10万枚、続く『東京行進曲』(1929年)が25万枚以上を売り上げる特大ヒットとなり、佐藤は日本の流行歌手第1号と言われている。 出演は真由子のジャズコンサートも見てきた神山監督のオファーで決まった。 「中山晋平さんのことはよく知りませんでしたが、『東京行進曲』は母が歌っていたことを覚えています。佐藤千夜子さんはオペラ歌手を目指していたそうで、オリジナルの音源を聴くと、発声の仕方が違うと思いました。ストレートにきれいに歌う方で、キーも高いし歌うことはこんなにも難しいんだと改めて思い、自分の中ではすごく勉強になった役でした」と振り返る。 実は、中山晋平という人物にも、浅くない縁もあった。それを思い起こしたのは昨秋、中山晋平記念館(長野・中野市)で映画公開記念のコンサートを行った時のことだ。 「中山晋平さんのお孫さん(中山治さん)から『中山晋平の役をやった俳優さんをご存じないですか?』と聞かれたんです。『いや、知りません』と答えたら、『あなたのお父様ですよ』と言われて、ビックリしました」 佐藤千夜子の波乱の人生は1977年、NHK連続テレビ小説『いちばん星』(主演・高瀬春奈)としてドラマ化。このドラマで父・津川雅彦は中山晋平を演じた。津川自身も、一番好きな歌に、黒澤明監督の『生きる』で主演・志村喬が歌う『ゴンドラの唄』を一番好きな曲に挙げている。 「そう言われて、初めて幼い頃の記憶がつながりました。父とお風呂に入ると、よく『ゴンドラの唄』を歌っていたんです。エコーがかかるお風呂で父が気持ちよく歌っていると、母が入ってきて、『あなたたち、下手ねぇ』と言うんです。父は気に入っていたので、よく歌っていたんでしょうね」 『シンペイ 歌こそすべて』には、昭和の大女優・松井須磨子(吉本実憂)も登場するが、かつて、父・雅彦の演出で母・朝丘が松井須磨子役を演じたこともあった。 「『女優』(渡辺淳一原作)という題名だったと思います。その時も母が(中山晋平の代表曲の)『ゴンドラの唄』や『カチューシャの唄』を歌っていたのを覚えています。松井須磨子という方はすごく行動力のある方だな、と思っていました。新しい映画をやるという感覚より、親近感もあって、私自身、入り込みやすかったと思っています」。新たな代表作の誕生に手応えを感じているようだ。 □真由子(まゆこ)1974年3月18日、東京都出まれ。俳優・津川雅彦と女優・朝丘雪路の一人娘として生まれる。幼少期から日本舞踊や三味線を学び、インターナショナルスクールで教育を受け、英語も堪能。1998年に女優デビューし、NHK大河ドラマ『功名が辻』、NHKBSプレミアム『子連れ信兵衛』シリーズ、映画『次郎長三国志』などに出演。音楽活動では『東京エキゾチカ with 真由子』名義でライブを展開。1月10日公開の映画『シンペイ 歌こそすべて』に出演するなど、俳優、歌手として精力的に活動中。
平辻哲也