伊藤万理華、映画「チャチャ」共演の中川大志は「ずっと頼もしいなと思っていました」
伊藤万理華が主演を務める映画「チャチャ」が10月11日(金)に公開される。 【写真を見る】映画「チャチャ」に出演する伊藤万理華と中川大志 「人目を気にせず、好きなように生きる」をモットーに自由気ままに生きる野良猫系女子・チャチャ(伊藤)は、ミステリアスな雰囲気を持つ樂(中川大志)と出会う。好きなものは正反対だが「2人いたらちょうどいい」と惹かれていくチャチャ。そんなある日、彼女は樂の秘密を知ってしまい...。 今回、伊藤と中川にインタビューを実施。誠心誠意で取り組んだという現場の雰囲気や、役に対する思いなどをたっぷりと語ってもらった。 ――ファンタジーやサイコホラーなど、ジャンルにとらわれない本作。脚本を読まれたとき、どんな感想を持たれましたか? 伊藤「初めて読んだときからチャチャの気持ちがよく分かり、共感できる部分もあって...映画としてどう組み立て、自分がチャチャとしてどう成り立っていくのか、不安とワクワクが溢れてきましたね」 中川「映画の構造というか、ストーリー構成のシステムが面白いなと思いました。チャチャはこの作品の象徴だし、僕が演じた樂という役もすごく魅力的で...夢中になって読みました」 ――伊藤さんがおっしゃる「役に対して共感できた部分」というのはどんなところなのでしょうか? 伊藤「チャチャは、服装や言動など、自由に生きていて、自分も昔からそういった『右脳で生きる』、『感情で行動する』みたいな、動物的なところがあり。傍から『個性的だね』とか、『アーティストだもんね』って言われるけれど、これはイジられているのか、羨ましがっているのかが分からない。その"空気感"を静かなところで感じ取りながら気にして、自分の好きなものを我慢するのか、それともチャチャみたいに生きるのか...自分はどっちだったのかな、と思ったときに、私はチャチャだったなって思ったんです」 ――奥の部分でつながっていたんですね。 伊藤「ただ、彼女がみんなと同じように繊細な感情を持っている...というのはすごく分かるから、表で見えているところと内側で思ってる感情を理解したいというか、してあげたい、守ってあげたいと思ったのが最初ですかね。実際演じてみてうまくいったか、と言われると、めちゃめちゃ葛藤しました。自分が思い描いていたものとは違う演じ方をしなければいけなかったので、難しかったです。ただ、(酒井麻衣監督から)『そのままでいてください』と言われたあと、彼女とどう向き合うかを考えたときに『チャチャと向き合うことは、自分と向き合うことかもしれない』と気がついて。こんな体験はなかなかできることではないな、と思いながらやっていました」 ――中川さんはいかがですか? 中川「最初に台本を読んだときに、彼がまとっている空気感や世界観みたいなものに憧れがありました。自分はすごく周りの目を気にするし、人と関わっていくうえで考えすぎて疲れちゃうこともあるけど、樂は、どこか達観していて、怖いものがない、失うものがないように見えたんですよね。目の前にいるんだけど、『あれ?別の世界で生きているのかな』、『この人を通したら、この色も違う色に見えるのかな』と感じる魅力があるというか。自分にはできない生き方だからこそチャレンジでもありましたし、演じるキャラクター自体も新鮮でしたね」 ――樂は好青年に見えますが、いい意味で裏切られるようなキャラクターです。いろいろと感じながら、思考を巡らせながら撮影に臨まれていたのでしょうか? 中川「この世界や未来に対しての不安とか、虚無感みたいなもの、何か埋まらない穴みたいな...いわゆる『何もない』を大事にしたいと思っていました。何もない彼の日常、生き方みたいなところをテーマに演じられたらなと思っていたので。今までの経験や考え方をなるべく削ぎ落として、余計なことをしないようにしましたね。現場ではとにかくそこを心がけていました」 ――映画「美しい彼」シリーズ、「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」などで知られる酒井監督のカラーが出ている本作。酒井監督にはどんな印象を持っていたのか、現場でどんなやりとりがあったのか教えてください。 伊藤「美しい映像を撮られる方という印象を持っていました。特に『チャチャ』は仕掛けが多く、色も多い印象です。監督の頭のなかで見せたい画がはっきり見えていらっしゃるから、その指示をよく聞いて、噛み砕いて、一緒に解像度を上げていきましたね。この作品は、画が面白いことも大事な要素ではあったので、(酒井監督の)頭のなかにあるものを具現化するため、妥協せず、ストイックに作り続けていらっしゃったように思います」 中川「美術や照明など、映像にこだわりがあって、全体的に濃密な時間を過ごしました。ただ、言葉で共有するのが難しいことを表現しようとしていて、言語化しづらい空気感、関係値、感情みたいなものを扱っていかなきゃいけない分、いろいろと大変でしたね。現場では、キャラクターたちの解釈の部分のすり合わせて、さらに調整をしていくのは、繊細な作業だったと思います」 ――今回、お二人は初共演です。やりがいのある撮影を終えて、お互いの印象を聞かせてください。 伊藤「私はずっと頼もしいなと思っていましたし、今回のインタビューを通して、『ここまで考えていらっしゃったんだな』と改めて思いました。現場でも樂の状態でずっといたので、中川さんというよりは樂と接していると感じていたし、いろんな現場を積み上げてきたからこその立ち振る舞いをされていて、すごく影響を受けました。中川さんがいてくださって、めちゃくちゃ安心しましたね」 中川「そう言っていただけて嬉しいんですけど、僕的にはふがいなかったというか...。今回、撮影以外でもなるべく樂の状態に近づけることをテーマとしていたので、本当はもっとコミュニケーションを取ったりとか...ね」 伊藤「全然喋れませんでした(笑)」 中川「力になれる瞬間がもっとあったらいいなと思ったんですけど、(テーマをまっとうすることを目標としていたので)なかなかできず...。でも、『その状態でいてくれたことが良かった』と言っていただいたのは本当に嬉しいです。伊藤さんの印象としては、台本をいただいた時点でお名前を聞いていたんですが、勝手に『ぴったりだな』とイメージしていました。悩みながらも絶妙なバランスで演じられていて、本当に伊藤さんにしかできないチャチャだったなと思います」 ――チャチャは正反対の樂に次第に惹かれていきますが、伊藤さんと中川さんは、正反対の二人の恋愛についてどう思われますか? 中川「チャチャと樂は、動物同士なので(正反対でも)通ずるものがありますよね」 伊藤「野良犬と野良猫だから(笑)」 中川「皆さんそうだとは思うんですけど、やっぱり『この人にこれ以上入られたくないかも』みたいな境界線はあると思うんです。でも、チャチャと樂は正反対でもそれがバチッとハマった。そこからつながりができて信じられないテンポ感で一緒にいましたけど、それが自然でしたよね」 ――おっしゃるように、正反対でも通ずるものがあるって大事なんですね。 伊藤「確かに。正反対だとしても、どこか共通点を探してしまうかもしれないですね」 ――樂にはある秘密があります。お二人は大切な人には秘密があって然るべきだと思いますか? 伊藤「恋愛って最初は秘密を抱えたままスタートすると思うんですけど、"そこから"じゃないですか。『この人になら言ってもいいかもしれない』とか『言わないままよりは嫌われてもいいか』ぐらいの信頼関係を積み上げたうえでしか、秘密を明かすことはできないと思います」 中川「別に『秘密』はあってもいいと思うんですけど、『隠し事』はない方がいいのかなと思います。後ろめたい気持ちがあるのは嫌ですね。僕だったら耐えられなくて言っちゃうかもしれないです」 伊藤「確かに、自分が言わないでモヤモヤするようなことは、後で自分を苦しめることになるから傷つくんですよね。だから、自分が苦しまないような秘密だったら、別に言う必要もないことだし、言わないのが苦しいと感じるなら、すぐにでも共有した方がいいと思いますね」 取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI
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