江戸木純×叶井俊太郎 余命半年でも、我々は「困ったな」とか言って前倒しで仕事するしかない。舞台挨拶で「死にそうだけど宣伝します」って言えばみんな見に来ると思う
経済産業省によると、日本で上映された映画の本数は2010年の716本に対し、20年には1,017本と1.4倍以上に増加しています。そんな映画業界でも知らない人のいない名物宣伝プロデューサーが叶井俊太郎さんです。数々のB級・C級映画や問題作を世に送り出しつつ、会社は倒産。“バツ3”という私生活を含めて波乱万丈な人生を送ってきましたが、膵臓がんに冒され、余命半年との診断を受けています。「残りの時間は治療に充てず、仕事に投じることに決めた」叶井さんが、多大な影響を受けたという映画評論家・江戸木純さんと「余命半年論」について話し合ってみると――。 【写真】江戸木さん「日本の映画の興行歴史に、カナイ映画っていうのがジャンルとして残るんじゃないかってくらいの功績がある」 * * * * * * * ◆もし、余命半年を宣告されたら 叶井 江戸木さんが余命半年って言われたら何をしますか? 江戸木 余命半年だったら何もしないかな。仕事とかもしない。 叶井 仕事しないで何すんの。 江戸木 何するか分かんないけど、この30年仕事しかしてないからね。旅行も仕事がらみでしか行ってないし。 叶井 余命半年になったらどっか旅行行くとかそういうこと? でも実際そうなったら、まずしないでしょ。 江戸木 したいなと思うよ。余命半年になったら仕事やり続けなきゃいけない動機もないから。でもそうは言いつつ、やっぱり仕事するかもしれないけどね。案外そこが元気の源かもしれないからさ。結局あと半年の命って言われたって、半年後じゃ映画館だってもう埋まっててこれから好きな映画をかけられるわけでもないしね。だから何がやりたいかを考えず時間も含めて半年いるかもしれないけど。でもあなたを見てると、余命半年と言われても、半年たっても生きてるけどね。 叶井 じゃあ半年って言われたらもう仕事しないんですか? 江戸木 実際にはしないわけにもいかないんだけどさ。しかけてる途中の仕事がいっぱいあるだろうから。権利抱えている映画が常時10本じゃきかないからね。自分で権利持ってるものとか、永久に持ってるものとかもあるから、それをどうするか決めるだけで半年終わっちゃう。
【関連記事】
- 奥山和由×叶井俊太郎 日本の映画作りを守るために戦った「シネマジャパネスク」の歩みを振り返る。奥山「叶井は女に支えられてきた人生だから、ズルい」
- 倉田真由美「夫がすい臓がんで余命半年を宣告されてから1年4ヵ月。今まで通り暮らす夫と娘に救われて」
- 〈独占告白〉倉田真由美、夫が心筋梗塞に。「気分が悪い」だけの症状に、自転車で病院へ。搬送、緊急手術で一命を取り留めた
- 74歳、余命1年半で夫の裏切りを知った妻の復讐。はぐらかす不倫相手と対決後に起きた、心境の変化とは?
- 三浦雄一郎 86歳でアコンカグアへ挑戦した私が、87歳では「要介護4」になって手足の感覚を失い。要介護とは「なにかをやってみよう」という希望につながるものである