韓国人観光客を迎え入れるときに「絶対NG」な行為とは?「ワサビテロ」等クレームは減少傾向
透明性と「お詫びの品」でクレームに対処せよ
──韓国人観光客に対しては、寿司店での「ワサビテロ」や天ぷら専門店における「漂白剤入りお冷」など、トラブルも起きています。韓国国内ではどのように受け止められていますか? 大きな事件として認識されていません。 というのも、日本旅行の数が非常に多いので、数あるうちの一つの出来事となっているからです。また、日本文化への知識のある層が増えたことにより、そうしたトラブルに巻き込まれる同胞のことを、気の毒とは思いながらも全面的に擁護する傾向はないように感じます。日本人が外国でタクシーのぼったくりにあっても「旅慣れてない」と言われてしまうような感覚です。 それら個別のトラブルが、国としての日本や日本旅行のイメージ全体に影響しているとは思えません。 ですが、そういった事件や不平不満が特定の場所で頻繁に発生してしまった場合、その店や地域が「危険」として認知され、観光客が一気に来なくなるリスクはあるでしょうね。言いにくいんですが、大阪の道頓堀なんかは日本をよく知る韓国人観光客には避けられつつあります。 ──クレームが出てしまった場合、どのように対応すべきですか? まず、トラブルがあったことを対外的にきちんと明示することです。その上で、どのような対応をしたかを具体的に説明します。すると誠実さが伝わり、評価は下がるどころか上がる傾向があるように思います。 消費者側に大きな損害を与えてしまった場合、その方が韓国人であれば、ありきたりなものではなくその店や地域でしか買えない特別な物をお詫びの品としてお渡しすると、被害感情が収まる可能性は高くなります。
韓国本土への展開、飲食業なら勝算あり
──韓国からの消費者を多く迎えるお店のなかには、韓国本土への進出を検討する業者も多いように思います。韓国進出への判断基準は何でしょうか? 飲食業に関しては、インバウンド需要が高いなら韓国進出を検討してもいいでしょう。それ以外の業種については、あまりお勧めいたしません。 飲食業が他と異なるのは、韓国における日本食市場に大きな伸びしろがあること、人材獲得や人材育成に好条件がそろっているからです。 日本食レストランはソウルやプサンにはありますが、他の地方都市ではまだまだです。日本食は人気がありますから、これからどんどん需要が増えてくると思います。 人材については、日本での飲食経験が韓国国内においては高く評価されている背景が理由です。本場で経験を積んだことは飲食業界の労働市場においては価値を持ちます。 日本企業の経営する日本食レストランで働きたいと考える韓国人の若者は多く、こうした人材は韓国企業が経営する日本食レストランでも責任者を任され、海外店舗で活躍するキャリアプランが一部で確立されています。 こうした状況は韓国店舗における人材獲得においては有利に働くでしょう。韓国店舗で雇った従業員を日本本社の従業員と交流させることも、人材育成に役立ちます。 一方、飲食業以外の業種については、付加価値をつけることが非常に難しくなっています。 日本では地域性と本場感を味わいつつ、安く購入できるからそのコンテンツを消費しているだけであって、それらの強みがいかせない韓国本土においてそのコンテンツが競合と戦えるほどの付加価値を持っているかというと、そうでない事例が多いように思います。 海外進出は初期投資がかかります。飲食業以外の業種の場合、韓国進出ではなくバイヤーなどの事業者を探す、といった方法がいいのではないかと思います。 ──韓国インバウンド、今後の懸念点はありますか? 韓国本土からくる韓国人観光客需要を取りにいくのがまずは第一優先です。一方、ソウルやプサンは国際ハブ化しており、他国もしくは外国籍の観光客も韓国経由で訪日していることには注意が必要です。 特に、プサンには注目すべきでしょう。プサンは多くの船が行き交う国際港ですが、プサンから福岡、大阪などに行くフェリーには欧米系観光客の姿を多く見かけます。彼らの多くは韓国と日本をセットで楽しみに来ています。 彼らがどういったニーズを持っているのかを把握すること、また、ソウルではなくプサンと連携して周辺地域を含む日韓セットで観光する欧米系観光客向けプランを立てていくことは、韓国向けインバウンド市場における一つの課題となっていくように思われます。 また、在韓米軍の割合も侮れません。 彼らの多くが韓国とアメリカを含む世界中の基地を行き来しています。もし、在韓米軍の観光客が日本に来て素晴らしい思い出を作ったのなら、彼ら本人がリピーターになり得るだけでなく、それを周囲の欧米系関係者に伝え、新規観光客の獲得につながる可能性もあります。 韓国を経由した欧米系訪日観光客の市場は、従来の韓国人向けとは異なる戦略が必要であり、今後の課題となってくるでしょう。(次回