アリシアクリニック倒産は氷山の一角。メンズ美容医療の甘いワナに気をつけろ!
■連絡がつかなくなるクリニックも 「最後は、最近話題の医療脱毛クリニックに関する男性の相談事例です。この方はネット広告を見て全身脱毛の10回コースを約30万円で契約しました。契約期間は2年間だったのですが、3回施術を受けたところでクリニックから突然休業すると連絡があり、その後一切連絡がつかなくなったと相談がありました。 このように、事業者と連絡がつかなくなるケースもありますが、この場合、消費者としてはなかなか対処が難しいことが多いです。そのため、一括払いなどの長期的な契約ではなく、サービスを受けるたびに料金を支払う都度払いをしてもらうよう呼びかけています。 結局、どのクリニックが良いかを見分けることは非常に難しく、大手だから安心というわけでもありません。 即日施術を勧める医師を選ばないことや、実施しようとする施術内容やその効果、費用、解約条件などの契約内容、想定されるリスクや副作用について、必ず施術前に説明する医師を選ぶことなど、消費者側のリテラシーを高めていくことも重要かと思います」 美容医療のクリニックだと免許を持った医師がいるはずなのに、なぜそのようなトラブルが起こる? 「クリニックに行くと、カウンセラーがすべての施術内容や金額を決め、医師はリスクや副作用の説明なしに施術をしているような相談事例も見られます。美容目的の施術は、多くの場合、緊急性がありません。 『今すぐ施術を受ける必要がある』などと不安をあおられるような問題のある勧誘や即日施術を勧めるクリニックとは契約しないようにしましょうと注意喚起をしています」 ■相談できる医師に診てもらうのが大事 医師の目線からは美容医療の健康被害・契約被害はどのように見えているのだろうか? 美容後遺症診療医として他院での施術後に後遺症が残ってしまった患者を診療している朝日林太郎先生に話を聞いた。
「美容医療分野は自由診療が多いので、施術内容の自由度が高く医師の腕の差が表れやすいです。そのため、経験の少ない医師から施術を受けるとその出来に満足できない場合が多くなるようです。 だからといって高額な料金設定なら良い医師が必ずいるわけでもないので、高い金額を払ったからと安心はできません。値段が安くても良いサービスを提供しているクリニックも多くあるので、結局は個別にサービスの質を見ていくしかないです。 ひとつ気をつけなくてはならないのは、美容医療分野は男性でも女性でもコンプレックスを扱う分野であることです。治療を受けることはなんら恥ずかしいことではないのですが、コンプレックスという患者の弱みにつけ込まれる場合があることも理解しておいたほうがいいです。 なので、治療の内容やリスクについてきちんとした情報を提供していて、かついろいろな相談に応じてくれるクリニックと医師を選ぶことが重要です。 また、クリニックで施術を受けた結果、その出来に納得できないけれど、そのクリニックの先生には相談しづらいというときもあると思います。 そのほかにも、いろいろな事情があってひとりで抱え込んでしまう方もいるでしょう。そのような際は、他院の先生に診てもらうことや後遺症外来に頼ることもひとつの選択肢として考えてもらえたらと思います」 多くの美容クリニックが乱立する今、念入りに情報収集をしてクリニックを選ぶことが必要だ。 イラスト/福田嗣朗 写真/Adobe Stock