口腔がんが肺に転移 精巣に悪性のがん 元繁殖犬のポメラニアンが受けた余命宣告 「助けてあげられなくてごめん」獣医師は泣いた
長崎県のとある繁殖場。地元の保護団体が介入し、繁殖犬の保護が進められています。 1匹でも多くの命を救うべく、団体間の垣根を超えて協力していますが、地元団体と連携して複数のワンコの命を救い続けているのが福岡県のボランティア団体、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)です。 【写真】獣医師の献身的な処置が功を奏し、自らエサを食べられるように 2024年5月、長崎の団体からヘルプ要請があり、複数の元繁殖犬を引き取ることになりました。そのうちの1匹がオスのポメラニアン・豆吉でした。保護当時、豆吉は口から血と膿をダラダラ垂らしている状態で、すぐに動物病院で検査を受けることに。そこで受けた診断は、口腔内のがん。 「すでに肺の転移している可能性がある」「精巣に悪性がんが確認された」と獣医師は話し、手の施しようがなく余命宣告を受けることになりました。
「人間は生きる上での選択が自分でできるが、犬はできない」
繁殖場で苦しい生活を強いられた豆吉に、ワンコとしての喜びをいっぱい感じてもらえるよう、幸せな第二の犬生へと繋げたいとメンバーは願っていました。つらすぎる余命宣告に肩を落としましたが、あらためて考えを巡らせました。 「人間も動物も病気もすれば怪我もする。治療をして治せるものもあれば、治せないものもある。人間は、それを受け入れて、余生をどう過ごすのかを考え選ぶことができる。でも、豆吉は、この世に生まれてから自らの選択は許されず、繁殖犬としてここまで過ごし、さらに病気に苦しんでいる…こんな不条理があって良いのか」 メンバーの目から悔し涙がこぼれました。「不条理」と向き合わざるを得ない豆吉が、残された時間にせめて笑顔になってくれるよう、できる限りの治療とお世話をする決意を胸に抱きました。
獣医師の献身的な治療で口からの出血が止まった
この思いは獣医師も同じでした。入院することになった豆吉を懸命に治療してくれ、豆吉の退院時には「ごめんね。助けてあげられなくて、本当にごめんね」と、涙ながらに語りかけました。 しかし、この獣医師の治療のおかげで口からの出血が止まり、自分の口でエサを食べられるようになりました。 「本当に良かった」と喜ぶメンバーでしたが、しかし、他のワンコがうれしそうにするオヤツを前にしても、豆吉はただただジッとしたままです。長年の繁殖場での生活で、自分の感情をそのまま出すことを忘れてしまっているように映りました。
余命いくばくもない今「本当の家族」と繋いであげたい
豆吉は今日もできる限りの治療を受けながら、残されたわずかな犬生で、少しでも「ワンコとして生まれてきた喜び」を感じ、笑顔を浮かべてくれることに期待しながら、メンバーは世話を続けています。 「こんな豆吉だからこそ」と、現実的には難しいとは思いながらも里親募集を開始。豆吉の余命は、2週間から1カ月ほど言われる中ですが、最後に一度でも「本当の家族」と繋いであげたいという思いからのことです。 現在、豆吉は緩和ケアを受けながら日々を過ごしています。本当の家族からの愛情を受ける日がやってくることを心から祈ります。 (まいどなニュース特約・松田 義人)
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