<城が語る>ハリルイズムを浸透させるピッチ上の細かい指示
ハリルホジッチ新監督の2戦目は、出来すぎたくらいのゲーム。途中交代で出場した選手が、生き残りへのアピールのために次々と結果を出す。最高に高まっている選手のモチベーションをハリルホジッチ監督がうまく引き出したとも言える。 私は、この試合を日本テレビのピッチ解説をするためグラウンドレベルで見ていたが、驚いたのは、ハリルホジッチ監督の細かい指示だ。まず右手を大きく上げて選手の注意を引くと次にジェスチャーで指示を送る。おそらく監督の戦術や意図を一日でも早くチームへ浸透させるために「常にベンチを見ろ!」という指示も事前に選手に飛んでいたのではないか。 攻撃のビルドアップでは気になった選手へ「開け!」「内へ」「行くな!」という指示を飛ばす。左サイドの乾は、チラチラとベンチを見ながら、その指示を守った。そしてゴール前にボールが集まっているときには、逆に守備の方へと目をやる。「攻撃には、3人、4人と人数を掛けろ」がチームコンセプトだから左右のサイドバックが攻撃参加する機会が増えるが、そのときにバランスの崩れる守備体系に対して、細やかにポジショニングを伝え、カウンターを受けるリスクに対してのマネジメントを徹底していた。 後半には、センターバックが本職である水本をボランチに起用したが、このときもポジショニングについての細かい指示が出ていた。二列目からFWが出てくると潰しにマークについたが、その際、どうしても空いたスペースを作ってしまうので、それに対して対処するように指揮官は、アクションを起こしていた。また交代出場する選手に対しては一人ひとりに通訳を交えてピッチ上でどういう役割を臨むのかの戦術的な意図を繊細に説く。 私は、ここまで細かい指示を出す代表監督を見たことがない。日本人の特性のひとつに勤勉さと、指示を忠実に守るという真面目さがある。ハリルホジッチ監督は、ワールドカップ予選までもう時間がない中で、「ハリルのサッカー」を植えつけることを細かい指示という形で表現しているのかもしれないが、そういう戦術に対する具体的な指示は、日本人の特性にフィットしているのかもしれない。選手も、そういう指示を見ていく中で、何がよくて何が悪いのかというハリルの意図を知り、チームが進む方向性が明確になっていく。 前日の練習も見させてもらったが、徹底してスピードを意識させていた。スピードとは切り替えの速さであり、パススピードの速さであり、判断の速さだ。フリーになった選手を使って、できるだけ速く動くスタイルで、当然のように球離れが速くなり前への意識が高まる。