<城が語る>ハリルイズムを浸透させるピッチ上の細かい指示
この2試合で際立ったことは、その「縦への意識」と「球際の強さ」である。 相手選手への寄せは20、30センチは詰まったように思える。これまでは見かけでは寄ってはいたが、実際は、パスもできる、ドリブルもできるという甘いものだった。だが、ここをチャレンジして詰めると、ドリブルを仕掛けるタイミングがつかみにくくなり、パスのコントロールも難しくなる。スタートからプレスも果敢にかけた。 「縦への意識」では、青山が存在感を示した。サンフレッチェ広島でも、ワンタッチで縦へパスを入れる技術は際立っていたが、まさにハリルホジッチ監督の求めるチームスタイルにマッチしたプレーヤーで、今後、岡崎との連携が深まっていけば間違いなく武器になる。 先制点となったミドルはスーパーゴールだった。前に体重をかけて振りぬくとボールが浮く危険性があったが、青山はアウト気味からボールを斬るようなイメージで抑えて蹴って、ボールは外へと逃げていった。素晴らしい技術だ。 ただ、球際、縦、プレスというキーワードの裏側にある死角を忘れてはならない。 寄せには、駆け引きが必要になってくる。ガムシャラな寄せは、経験のある相手にかかれば、一発で外されるし、ワンツーをうまくつかって抜かれる危険性がある。左サイドで途中起用された太田が、いい例だった。ワンツーで何度か抜かれ、太田は寄せるタイミングをはかりかねていた。欧州でプレーしている酒井高徳が、逆サイドで1対1で止めていたのとは対照的で、球際の強さには、同時に駆け引きが必須になるのだ。 また親善試合では6人の交替枠があったが、本番では3人しかない。その中で前半から激しいプレスを続けて体力が持つのかという問題もある。後半には、デイフェンスラインを下げてブロックをつくり、カウンターからの得点シーンを作ったが、裏には体力低下を防ぐという指揮官の狙いもあったと思う。